書評

ダイエットに役立つ経済学
2018年1月15日

Bloombergが書評記事で『The Economists’ Diet』という本を紹介している。
著書の2人は経済学を応用して18か月の間に合計54kg痩せたのだという。


この本のテーマは単純だ。
減量を財政再建に喩えているのだ。
体脂肪を減らすために、政府債務を減らすために役立つ経済学の教えを応用しようというのである。

選択肢は2つ:

  • 無秩序なデフォルト ≒ 健康を害する
  • 政府支出の削減 ≒ 食べる量を減らす

もちろん後者を選ぶために書かれた本なのだが、この豊かな時代にどうやってそれを実践するか。
そこで流行りの行動経済学の出番となる。
この本では行動経済学に基づいて食を取り巻く生活習慣を変えていく方法が書かれているのだそうだ。
面白そうだと思った次の瞬間、ふと思いとどまった。

そもそも行動経済学は心理学の知見を多く借りてそれを経済学に応用したものだ。
ダイエットの話をわざわざ行動経済学で扱う必要がどこにあるのだろう。
行動経済学にこだわるより、より広範な心理学の知見を借りてダイエットした方がいいのではないか。
そう思い至った。
世間で無数に流布するダイエット本は玉石混交だろうが、中には心理学に基づいた良書もあるのではないか。
そう考え、すっかり冷めてしまった。

こういう本が書かれること自体、経済に関わる者の偏屈さを示しているようにさえ思える。
ニュー・ケインジアンなら、痩せた自分を期待するだけで痩せられるはずだ。
合理的期待の力は万能だ。
しかし、当然そうはならない。
だから、行動経済学というような分野が必要とされる。
でも、それにしてもベスト・チョイスとは限らない。

経済の素人に経済政策を決められることが危険なのは米国を見れば明らかだ。
しかし、蛸壺にはまったプロにやられるのも恐ろしい。
そうみんなが思っているから、素人がそうした権力を握ってしまう。
厄介な世の中だ。


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