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タトゥーは消えない。守りを固めろ:ビル・グロス
2020年9月15日

かつて債券王と呼ばれたビル・グロス氏が、欧米での株式パフォーマンス格差について解説し、守りを固めるよう説いている。


世界経済は2020年、見えないウィルスによってタトゥーを入れられている。

グロス氏が2か月ぶりのInvestment Outlookで、コロナ・ショックが世界経済に容易には消えることのない変化をもたらしていると示唆した。
この文章の前は、息子が体中にタトゥーを入れていることを半ば嘆いているから、ここでのタトゥーは少々厄介なものといったニュアンスだろうか。

さて、今回のInvestment Outlookの主要な変数も実質金利だ。
前回は実質金利の低下がグロース有利をもたらしているとの指摘だった。
今回は、実質金利が欧米格差に影響を与えているという話だ。
グロス氏は3月以降の欧米の実質金利(5年もの物価連動債利回り)の動向を紹介する。

  • 独: 60 bp低下し、マイナス115 bpへ
  • 米: 180 bp低下し、マイナス130 bpへ

グロス氏は、この差がユーロ/ドル相場をはじめとする様々な指数の動向をかなり説明すると述べている。
単純な株価モデルでいえば、欧米間で株式パフォーマンスが最低20-30%あるはずとの計算になるという。
実際、米国株は欧州株をアウトパフォームしている。
金融環境がより緩和的になったことが効いているのだ。

そういいながら、グロス氏は、米国株のアウトパフォーマンスの理由はそれだけではないと話す。
もう1つ、欧米間での財政政策の規模の差が効いているという。

米国の可処分所得は一度も減少せず、最近の数字では年率12%上昇している。
ドイツ他の欧州経済が、企業に直接、軽めの刺激策を実施するのを決めたのに比べ、米財務省とFRBは、労働者のお財布にお金が入るよう失業保険ほかの保証を通して個人に直接「ヘリコプター・マネー」を給付した。

つまり、グロス氏は、欧米間の株価パフォーマンス格差が、大きくは実質金利と財政政策の差によるものと考えているのだ。
そして、米市場の相対的有利が永遠に続くとは限らないと警告している。

何とも皮肉な話だ。
かつての債券王に引退を促した1つの要因は、あるポジションの不調にあったとも噂された。
それが米独金利差の縮小に賭けるポジションだった。
それは短期では実を結ばず、グロス氏の運用成績の足を引っ張ったのだ。
想定よりかなり長い時間がかかったとはいえ、グロス氏の読みはコロナ・ショックで一気に実現したことになる。
そのグロス氏が、今度は逆に触れる可能性を警告している。

  • 財政刺激策: 峠は越えた。
    「今後も財政で経済を刺激しようと思えば、財政赤字は4兆ドルでなく5-6兆ドル必要になる。
    財政赤字を2-3兆ドルにまで減らすと・・・民間セクターが長年最低でも年率6-7%の実質成長率を遂げないと賄えない。」
  • 実質金利: 米国株のアウトパフォームを継続するには、実質金利が低下し続ける必要がある。
    「5年もの物価連動債利回りはマイナス180 bp、マイナス230 bpと下げなければいけないかもしれない。
    それには許容できない規模のQEが必要になろう。

ここから導かれるグロス氏の結論はこうだ。

したがって、小口株式売買アプリでデイ・トレードしている人は別として、投資家はこれまで避けられてきたセクターを用いて守りを固め始めるべきだ。
例えば、タバコ、銀行、さらに欧州市場に上場する外国企業で、人為的な実質金利低下の後に正常な経済的繁栄が戻るといった夢によって株価が高騰していないものだ。・・・
世界経済に刻まれたタトゥーは、今後数年簡単には消せない。


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