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ハワード・マークス タイミングとタイムの違い:ハワード・マークス
2022年1月19日

オークツリー・キャピタルのハワード・マークス氏は、米経済の回復を予想する半面、刺激策を減らすことも必要とし、投資家が検討すべき2つのポイントを説明している。


「私は、FRBが資産価格を管理しようとすべきとは思わない。
そうでなく、経済がその機能を果たすのを助ける環境を作ろうとすべきだ。
しかし、一方で、過度な刺激策・ハイパーインフレ・景気後退の時を除けば、FRBはむしろ比較的受動的であるべきだ。
だから私はハンズオフや自然な金利を提唱している。」

マークス氏がBloombergで、金融政策について語った。
パンデミック時のFRB対応について称賛するものの、いつまでも続けるべきでないとの考えだ。

「(経済の)強さに関係する需要はある程度インフレ要因になっている。
金利は上昇すべきだし、経済刺激策は減らすべきで、それが今起こっている。
FRBが以前人々に信じさせてしていたより早く大きな利上げだ。
それがある程度経済を冷ますだろう。」

マークス氏は、足元のインフレの一因が需要面にも存在すると考えている。
経済が一定の回復を見せ、インフレが社会問題化している今、需要拡大をもたらした刺激策は減らしていくべきと考えている。
需要面に注目したインフレ対応という観点から見れば、経済をある程度冷ますことが解の1つになる。
問題は《ある程度》がどの程度か、そこまでうまく経済を操作できるかにある。

経済学者が精密に(経済の調整において)行動できる能力について過大評価があると思う。
経済学者が望むとおりに(経済を)動かすことは難しい。

仮にFOMCごと25 bpずつ利上げするとして、どこかで経済や市場を混乱させない保証はない。
マークス氏の指摘は、この先いくらか特に市場が動揺しうる可能性を連想させるものだ。
(ただし、マークス氏は経済回復が続くと予想している。)

マークス氏は、インフレ懸念のある市場環境で投資家が検討すべき点を2つ挙げている。

  • インフレへの伝統的対処法:
    今後インフレ的になると予想するなら、次のような投資先をポートフォリオに採り入れるべき。

    • 固定金利の債務商品でなく変動金利の債務商品
    • 先行き家賃を引き上げられる不動産
    • インフレを上回る成長を期待できる企業
  • 正しい理由での売買:
    「私は自分のポートフォリオをひっくり返したりしないし、保有資産すべてを投げて、行き過ぎていると書いたものをたくさん買ったりしない。
    もしも間違いで、インフレが自然に冷めたらどうなるか。」

後者は、先日の「Memo」の内容を受けたものだ。
マークス氏は、このMemoの趣旨が《売るな》ということではなく「正しい理由で売れ」ということである点を強調した。
同氏は、マーケット・タイミングを行わないとするオークツリーの基本方針を繰り返している。

「オークツリーはマクロ投資家ではない。
正しくマクロ予想を行うのは困難であり、私たちの投資判断はマクロ予想によるものではない。
魅力的な価格で良い資産を買うことは、長い目で見てどのような投資シナリオにおいてもまだ最良のツールだ。」

この発言を聞くには2つの前提を理解する必要がある:
中央回帰の仮定と分散の担い手だ。
仮に、向き合っているディストレスト資産が中央回帰せず、ただただ下落するなら、今魅力的な価格で買っても、結局損をすることになりかねない。
ただし、市場が中央回帰するという前提は、決しておかしなものではないだろう。

もう1つの分散の担い手については、オークツリーはそもそもその役割にはない。
(同社が担う分散があるとすれば、ディストレスト資産内での分散のみだ。)
大きな意味での分散は、オークツリーのファンドを買った投資家の側の役割になる。
この投資家からすれば、どのファンドを買うか売るか、オーバーウェイトするかアンダーウェイトするかは避けられない。
(オークツリーのファンドであれ、他のファンドであれ、個別銘柄であれ、多くの一般投資家はこちらの立場に置かれている。)
ただし、マークス氏がいうように、この分散においても根拠のない変更をすることは望ましくないだろう。

マークス氏は、投資家ビル・ミラー氏の言葉を引用しつつ、投資の秘訣を語っている。

彼(ビル・ミラー)が言ったのは、投資家を機能させるのは(売買の)タイミングではなく(投資している)タイムだ、ということ。・・・
優れたプロは、出入りや何をオーバーウェイトするかで、少しプラスを得ることができるかもしれないが、うまくやれる人はとても少ない。


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