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ゼロ金利は景気減速のダメージを大きくする:河野龍太郎氏
2022年4月25日

BNPパリバの河野龍太郎氏がマクロ安定化政策のあるべき方向性を論じているが、その議論の一歩先には極めて重大な岐路の存在が暗示されているようだ。


河野氏が財界で、金融政策などマクロ安定化政策の本質を問い、あるべき方向性を論じている。
まさに正論であり、日本が見直すべき面だが、その議論は原典(日本語)に任せよう。
ここでは、その中で指摘された、忘れがちな事実の指摘部分について紹介したい。

日本では、もともと実質金利の低下による景気刺激効果は小さいと分析されてきた。
金融緩和効果が発揮されるとすれば、長期金利の低下による内需刺激効果より、むしろ円安促進を通じた効果だと認識されてきたのである。

日本の金融緩和による経済刺激効果の伝達経路についての指摘である。
大きく経路が2つ挙がっている:
・低金利
・通貨安
このうち、後者が主たるものとの指摘である。

同様の指摘は決して珍しくない。
異次元緩和スタート時、リフレ派の日銀副総裁は円高修正による輸出増加を重要な伝達経路として挙げていた。
また、日銀国際局長を務めた長井滋人氏は「金融政策の反応関数の最重要パラメータ」が「為替レート」だったと振り返っている。
日銀の金融緩和の主たる目的が通貨安誘導であることは公然の秘密なのだ。

黒田総裁自身、2017年から何度か「リバーサル・レート」という考えを口にしている。
これは「金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方」だ。
日本では阻害されていないとしたものの、低金利による景気刺激には限界がありうるとの指摘だ。
追加緩和に消極的な理由として言及したのだろう。

実際のところ、事業会社の立場から見て、需要創出にこれほどの低金利がこれほど長期間必要なのだろうか。
金融政策にせよ財政政策にせよ、需要の先食いの性格が強いことを考えれば、すでに私たちは先食いし尽くしている。
もちろん、刺激策を緩めれば先食いが減るからマイナスは出るのだろうが、それも程度の問題だ。
みなが円安に文句を言っている今は刺激策を緩める良いタイミングのように思える。

河野氏は、グローバル経済がピークアウトする局面で起こってきたことを振り返っている。

その時、日本はゼロ金利のままで、利下げ余地はなく、円高圧力を吸収できない。
グローバル経済の減速局面で円高が進展し、日本経済へのダメージが増幅される。

日銀の金融緩和にとって重要な伝達経路が通貨安だとすれば、苦しい時のためののりしろを持って置くことは悪いことではあるまい。
さもないと、次のリスク・オフ局面では悲惨なことが起こりうる。

  • もしも過去のように円高圧力が働けば、また不況時の円高になる。
  • もしもいつもと違い円安傾向が続けば、通貨危機のフレーバーが強まる。

日銀は今、何を守ろうとしているのか。
明確なメッセージを発しない場合、どうしても財政従属を疑わざるをえなくなる。
それは、通貨の番人としては最も避けるべき道だろう。


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