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ゼロ金利が株式・債券に及ぼすインパクト:ブリッジウォーター
2020年8月11日

ブリッジウォーター・アソシエイツのボブ・プリンス共同CIOが、ゼロ金利下のポートフォリオ運用が直面する困難について解説している。


ゼロ金利とは気の遠くなるようなことだ。・・・
リスク・プレミアムを除いて割引率が存在しなくなってしまうんだ。

レイ・ダリオ氏らとともにブリッジウォーターの共同CIOを務めるプリンス氏がBloombergで、ゼロ金利の意味、投資へのインプリケーションについて尋ねられている。
同氏の答がほどよく理屈っぽくて勉強になる。

伝統的な60-40ポートフォリオにおける債券について多くのインプリケーションが生じている。
債券の観点から言えば、事実上ゼロ・リターンであり、リターンは(上下に)非対称になっている。
債券利回りの上昇には(理論的には)限度がないからだ。

「伝統的な60-40ポートフォリオ」とは、ポートフォリオにおいて60%を株式、40%を債券に配分するというやり方。
株式のリスクをとりつつも、債券である程度のヘッジ効果・流動性を確保する昔からの知恵だった。
多くの人が、これを変更すべき時に来ていると考えている。
(たとえばジェレミー・シーゲル教授は75-25を奨めている。)
ゼロ金利ではこれ以上の利回り低下には限界があり、つまり、キャピタル・ゲインは得にくい。
一方、金利上昇の可能性は排除できないから、キャピタル・ロスは発生しうる。
債券リターンの確率分布は下方に偏っている。

プリンス氏は、債券だけでなく株式へのゼロ金利の影響を認識すべきだとし、3つのインパクトを指摘した。

  • 株価下落のフロアがなくなる
    景気後退で企業収益が悪化すれば、それは株価下落要因だ。
    しかし、通常は同時に金利が低下し割引率が低下することが株価下落をオフセットする方向に働く。
    金利低下余地が小さくなると、これが働かなくなる。
  • 通貨に脅威が及ぶ
    利下げ余地がなくなると、現在見られるように、経済刺激策は財政政策+マネタイゼーションに移る。
    これは通貨の価値を貶める要因になる。
  • リスク分散が効かない
    株価が下落すると債券が上昇することが多いことから、伝統的にこの分散効果が期待されてきた。
    しかし、債券のアップサイドが限定されると、これが働かない。

いずれの説明もそう難しい話ではないし、多くの投資家が心の中で認識していることだろう。
しかし、ゼロ金利の債券・株式への影響をこれほど丁寧に分析・意識・表現できるかといえば別の話だ。
レイ・ダリオ氏は日ごろから分散の重要性を度々説いてきた。
その分散の実践には、こうした丁寧な分析が必要となるのかもしれない。

プリンス氏は、ポートフォリオ運用が直面する困難を端的に表現した。

ポートフォリオにおける株式保有においてはダウンサイドの保護がない状況であり、債券保有においては非対称なリターンのパターンとゼロ利回りになっている。
伝統的な投資戦略にとってとても問題の大きなシナリオだ。


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