スティグリッツ:公正さの中核をなすのは支払い能力

以前から共和党の税制改革案を批判してきたジョセフ・スティグリッツ教授が、いっそう辛辣に批判を展開している。
同法が経済刺激とならないばかりか、利益誘導を拡大し、経済成長を阻害すると論じている。


この法律はどう好意的に読んでも『税制改革』ではない。
改革とは歪んだ抜け道を封じ税制の公正さを増すものだ。
公正さの中核をなすのは支払い能力だ。
しかし、この税法は最も支払い能力のある者(第1の階層)に対して平均で数万ドルもの減税をもたらす。
(2027年まで)完全に実施されると、(第2-4階層の)中間層にある大多数のアメリカ人にとって増税になる。

スティグリッツ教授はProject Syndicateへの寄稿で、自身の信念を明かした上で、共和党の税制改革を批判した。
「公正さの中核をなすのは支払い能力」という断言は、教授の社会民主主義的な信念を示すものだ。
政府を介して強い者が弱い者に手を差し伸べるべきという考えは、共和党の新自由主義・小さな政府といった考えとは相いれない。
スティグリッツ教授からすれば、米税制はこの税制改革の前から逆進的だったと映るし、今回の法案通過でさらに悪化したことになる。

「今では広く、格差拡大が米国の主たる経済問題であると考えられるようになった。
この四半世紀、GDPの増分のほぼすべてを最も豊かな者が独占してきた。
新法は、この歪んだ傾向を解消するのではなく、傷ついた者を侮辱するようなものだ。」

今回の税制改革の評価は大きく尖鋭に二分されている。
米国には新自由主義的な考えの人も多いから、賛否が分かれるのは当然のところ。
しかし、一つ意見が一致している点がある。
それは、今回の税制改革が米社会の格差を拡大させるだろうという点だ。


格差拡大を許容してでも、その悪影響を打ち消すだけの効果があるなら、是とすべきとの考えもあるかもしれない。
しかし、スティグリッツ教授によれば、この税制改革は経済成長を阻害するのだという。

  • 経済はすでに完全雇用に近い。
    総需要の大幅拡大の兆しが見えれば、FRBは利上げを行い、それが経済成長を弱めるだろう。
  • 青い州(民主党の強い州)を狙い撃ちにした条項によって、ニューヨークやカリフォルニアなど米経済の要所に悪影響を及ぼす。
  • 財政赤字拡大は貿易収支を悪化させ、輸入超過が米製造業を傷づける。

さらに、今回の税制改革に潜む不公平が、経済を歪ませるという。

「(所得区分ごとに)異なる取り扱いは、税制が不公平だという(正しい)考えに導くだけではない。
非効率も生んでしまう: 企業が所得や活動をより有利な形に変換しようとして、資源が有利なセクターに移り浪費されてしまう。」

その筆頭がジェフリー・ガンドラック氏が激怒したキャリード・インタレスト課税の優遇維持である。
スティグリッツ教授は、プライベート・エクイティが「雇用を破壊する」とし、それらを優遇する条項が維持され、新たに有利なパス・スルー課税さえ設けられたと非難している。

不公平は至るところにある。
スティグリッツ教授は、今回の税制改革が企業に恒久減税を与えるのに、個人には時限的な減税しか与えていない理由を説明する。
それは、共和党が選挙民に対して2つの思い込みを抱いているからだという。

  • 選挙民は次の給料の先のことまでは考えていない。
  • 支援企業がくれる金は選挙民より重要。

スティグリッツ教授は、11月の中間選挙が状況を改善してくれることに期待している。


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