海外経済 政治

スタンリー・ドラッケンミラー流 ドル相場/ファクター解説
2021年5月13日

スタンリー・ドラッケンミラー氏が、昨年から今年のドル相場の変化を米国債と米国株の需給の観点から解説している。


当時FRBと議会が(大規模刺激策を)行った理由は理解しているし、リスク対効果で正しい判断だったと思う。
しかし、事実が変化したら変えないといけない。
当時から事実は大きく変化した。
歴史上これほど金融・財政政策が経済状況と乖離した時代は1度もない。

ドラッケンミラー氏がCNBCで、前例のない規模で拡張的な金融・財政政策を継続する米政府・FRBを批判した。
小売り売上高など経済がすでにトレンドを超える状況にあると指摘し、経済が危機を脱した今長々と継続すべきでないと主張した。
同氏はこれまで長期にわたって金融緩和を続けるFRBを批判してきたが、今では対象に連邦政府を加えている。
背景には、急激に進んだ財政悪化がある。

FRBによる買入れがなければ・・・債券市場は(米国債増発を)拒否していただろう。
FRBがこの莫大な拡張的財政政策を可能にしている。
問題なのは、もしもインフレになれば、率直に言うとたとえインフレにならなくても、莫大な債務が存在することだ。

米政府債務・負担はパンデミックの前から深刻な問題だった。
そこにパンデミックで6兆ドルの債務がさらに積み上がった。
(日本人が心配するのもおかしいが)米政府の(金利上昇時の)利払い負担はどんどん大きくなっていく。

ドラッケンミラー氏は、今後利払い分もFRBによりマネタイズされることになると予想する。
これがドル、その主要準備通貨としての地位に「恐ろしいインプリケーション」を与えるという。
この兆候が、昨年3月の市場の「メルトダウン」時に見られたのだという。

後から見ると、米国でCARES法が提案されている時に、一晩で外国人は1兆ドルの米国債を売却した。・・・
これが重要な理由は、20年間、米国債は外国人にとってグローバル・ポートフォリオをヘッジするための目的地になっていたことだ。
株式市場や世界経済に問題が起こる度に必ず、外国人は米国債や米ドルに逃避してきた。
それが昨春に破られ、以降、外国人は米国債を売っている。

ここから、メルトダウン以降の株式・債券・為替市場についてのドラッケンミラー氏の解釈が始まる。
かつてクォンタム・ファンドでジョージ・ソロス氏とともにBOEを相手に回してポンドを売り崩した張本人だけに、その見立ての組み立て方は興味深い。

「つまり、20年間で年平均5,000億ドルが米国債に流入していたのが、米国債からの流出になっている。
米国は推計7,000億ドルの経常赤字で、これに釣り合う資金流入が必要だ。
5,000億ドルの流入が消え、流出に転じており、ドルに(売り)圧力が加わっている。」

米国は外国から借金をして財・サービスを買っている。
その借金の中心が米国債だが、逆にこれが売られている。
つまり、金貸し(外国人)が貸金を引き上げようとしているわけだ。
これは、米国債や米ドルにとって下げ圧力になる。

米ドルの実効為替レート
米ドルの実効為替レート

「道理をわきまえた人なら『もしもそうならどうしてドルは3-7月に下げなかったのか』と尋ねるだろう。・・・
コロナウィルスで恩恵を最も大きく受けたのは、明らかに巨大なデジタル・トランスフォーメーション企業だ。
グーグル、マイクロソフト、巨大ではないがズームのような企業であり、それらを独占する国が米国だ。
債券からの5,000億ドルの流出は、世界の中央銀行、ソブリン・ウェルス・ファンドから米国株市場への莫大な流入でオフセットされたんだ。」

ドラッケンミラー氏は、従来米国債が引き受けてきた外国マネーの受け皿の役を一部のテクノロジー株が引き受けていたと解釈している。
しかし、受け皿を引き受けるには、株式はやや不安定な投資対象かもしれない。

7月までに市場でのその動きが大きくなり、相対価格が上昇した。
ワクチンの状況が改善し始めると、ドルはピークを迎えた。
オフセットが減少し始めると、ワクチンはグロース株からバリュー株へローテーションを引き起こす傾向にあり、米国の大きな有意性はグロース株にあるので、ドルに圧力が加わり続けているのだと思う。

つまり、米国債に代わる、外国人にとって魅力的な投資対象を用意し続けない限り、米ドルは危ないということだ。


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