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スタグフレーション的債務危機へのシナリオ:ヌリエル・ルービニ
2021年9月24日

ヌリエル・ルービニ ニューヨーク大学教授は、現在の米経済の状態を「穏やかなスタグフレーション」と呼び、その後に起こりうる4つのシナリオを検討している。


4つのシナリオは、経済成長が加速するか減速するか、インフレが高止まりするか鈍化するかによる。

ルービニ教授がProject Syndicateで、今後の経済・市場を経済成長とインフレの2軸で場合分けして将来を占っている。
この複線的な議論は、最近の教授の悲観的予想を理解するのに役立つだろう。
(文中の「中央銀行」は複数形をとっており、各国の中央銀行を指しているものと思われる。)
4つのシナリオとは:

  • ゴルディロックス: 高成長×インフレ鈍化
    パンデミック収束とともに経済が回復、インフレが鈍化すると見る、ウォール街で優勢な見方。
    株価は上昇、債券利回りは緩やかに上昇、無難に金融政策正常化が進む。
    「株式では、米国から外国市場(欧州、日本、新興国市場)へのローテーション、グロース・テクノロジー・ディフェンシブからシクリカルやバリューへのローテーションが起こるだろう。」
     
  • 過熱: 高成長×高インフレ
    • 中央銀行が後手に回れば、株価上昇と低い債券利回りがしばらく続くが、後にインフレ・リスクプレミアム拡大により株式・債券ともに下落する。
    • 中央銀行がタカ派的スタンスを採りインフレ退治を始めれば、株式・債券ともに下落する。
  • スタグフレーション: 低成長×高インフレ
    債務の罠」に陥った中央銀行は金融政策正常化が難しくなり、負の供給ショックがインフレ圧力を強める。
    債券の名目・実質利回りが上昇、株式は弱気相場入りも。
     
  • 成長鈍化: 低成長×インフレ低下
    株価は調整、債券利回りは低下。

ルービニ教授は、市場や政策決定者がゴルディロックス・シナリオをアピールしていると危ぶんでいる。
教授は、短期的には過熱シナリオも十分ありうると心配している。
しかし、たとえ経済やインフレが過熱しようと、「債務の罠」に陥った中央銀行はインフレ退治に十分に積極的にならないだろうという。
そして、中期的には負の供給ショックによりスタグフレーション・シナリオに移行すると予想する。

大きな名目固定金利債務比率を引き下げたいとの魅惑にかられ、中央銀行はインフレと戦って経済・市場のクラッシュのリスクを冒すよりも、インフレを許容することになろう。・・・
しかし、今日の(民間・公共両方の)債務比率はスタグフレーションのあった1970年代よりはるかに高い。
過剰債務を抱え所得が大きく減った公共・民間の経済主体は、インフレ・リスクプレミアムが実質金利を押し上げれば、支払不能の危機に直面する。
そうなれば、私が警告してきたスタグフレーション的債務危機のお膳立てが整うことになるだろう。


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