ジム・チャノス:空売りは資本主義の捜査官

息の長い空売りで有名なKynikos AssociatesのJim Chanos氏が、ショート・セラーとしての矜持を語っている。
空売りは自社や顧客の利益のためであると同時に、健全な資本主義を育むためにあるのだという。


ショート・セラーは究極の資本家だ。
資本主義が成立するためには資本が適切に配分されることが必要だし、誤った配分が為されたり、詐欺にあったりしてはいけないからだ。
ショート・セラーは唯一リアルタイムでその探索にあたっている市場の捜査官なんだ。

チャノス氏は先月デトロイトで開催されたトーク・イベントで、ショート・セラー(空売りで利益を得る投資家)の使命を語った。
過去エンロンなどの企業の不正・不適切会計を糾弾してきたチャノス氏は、短期のショート・セラーではない。
自身の主張が正しいかぎり何年でも続けるやり方で、ショート・ポジションが果実を生むのを待ってきた。
最近ではテスラシェール関連銘柄のショートで注目されている。
その主張が正しいかぎり、彼らの資本市場への貢献は大きい。

「私がいつも口にする冗談は、規制当局や法執行機関が金融の考古学者みたいなものということ。
何かが起こってから10年後になって、被害者がお金を失った理由を教えてくれる。」


チャノス氏は空売りが自社や顧客の利益のためであることを自覚している。
それだけにショート・セラーは有効なのだ。
リアルタイムに資本市場の欠陥を暴くようインセンティブが付いているからだ。
チャノス氏は、劣った事業、詐欺まがいの事業にお金が投じられていないか巡回するのがショート・セラーの日課であるという。
とりわけ後者は早急に警鐘を鳴らすべき事象だろう。

チャノス氏は大学で金融詐欺の歴史について教えている。
ほとんどの金融詐欺は本質において実はポンジ・スキームに他ならないのだという。
授業では、金融詐欺のサイクルが金融サイクルに少し遅れてやってくることを強調しているという。

  1. 強気相場が進展すると、人々の疑り深さは低下する。
  2. 人々はどんどんリターンを追求したがり、真実にしてはあまりにも素晴らしすぎるアイデアを求めるようになる。
  3. 市場が下落を始めると、人々は手を引き、お金を財布に戻し、払い戻しを求める。
  4. その時、世界中のマドフが行き詰ることになる。

米国に遅れて、日本も段階2に入ったところだろうか。
日本が世界シェア4割を占めるビットコイン市場など、この段階の好例かもしれない。
もしかしたら楽観は裾野を広げ、よりもっともらしい株式市場でも「素晴らしすぎるアイデア」が蔓延していくのかもしれない。
それでも、こうしたことはかなり先になるまで表面化しないのだろう。
景気後退に入り、少し遅れて段階3が来て、段階4が来る。
ショート・セラーはその時を心待ちにしているのであろう。


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