息の長い空売りで有名なKynikos AssociatesのJim Chanos氏が、トランプ政権のインフラ投資、エネルギー産業、米経済について語っている。
トランポノミクスのインフラ投資に期待するのは「フェイク・ニュース」に騙されるのと同じだという。
「ウォール街の投資銀行にとってはいいことだろうが、そこからくる経済成長で多くの人がワクワクできるとは考えていない。」
チャノス氏はInstitute for New Economic Thinkingのインタビューでトランプ政権のインフラ投資について否定的なコメントをした。
インフラ投資については、多くの投資家がリフレ効果のある成長戦略として期待してきた。
またまたトランプ発のフェイク・ニュース
「もう一つのフェイク財政ニュースだ。インフラ投資はPPPで行われる。
私はその分野に長い経験がある:
2005-06年にその類のオリジネーターだったMacquarie Bankをショートしていた。
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同行がオリジネートしたインディアナ有料道路(債務のために2014年に倒産申請)は有名だ。」
チャノス氏がPPPの経済的波及効果を高く評価しないのは、民間投資家が高い利益率を追求するものだからだ。
多くのPPPでは投資家と消費者の間に利益相反が尖鋭になる。
- 投資家: 期待したほどキャッシュを稼げない
- 消費者: 利用料を利上げすればより安いものを探さないといけない
これがPPP事業体の破綻を招いたり、住民の不満を爆発させたりする。
自治体は当初こそ資金を抑えてインフラ整備ができるものの、結局は責任・投資負担がブーメランのように戻ってくる。
さらにチャノス氏は、修理・修繕など本当に緊急の投資はPPPになじまないとも指摘している。
エネルギー産業は凋落へ
長らくシェール産業のショートを手掛けているチャノス氏は、従前の見方を変えていない。
旧来型のエネルギー産業全体が今後も問題を抱え続けるだろうという。
「多くが経済性がない。
原油・天然ガス・化石燃料の世界需要が落ちているのに供給は増加を続けている。
エクソンはかつて資本収益率が20%台だったのに、今では1桁だ。
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サウジアラビアがアラムコのIPOによって国有の原油遺産の一部を急いで売ろうとしていると私は言い続けてきた。
その理由がここにある。」
多くのエコノミストが原油について弱気な見方を示している。
この見方はますますコンセンサスになるようだ。
シェールはそろばんが合わない
ショートしているシェール産業については従来の「金を捨てるようなもの」との見方を継続している。
「シェール業者は困難な状況にある。
資本調達し生産を増やすのには成功したが、投資家のためのキャッシュフローを生み出していない。
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彼らは掘削を続けるだろうが、利益を還元する方法を見出さないといけなくなる。」
米経済は循環的不況に
強弱両方のデータが見られる米経済については「持続的拡大の中の軟化点」と表現した。米経済が10年間不況なしに来られたことはないとして自然なことと示唆し、強気一辺倒を続ける一部意見に釘を刺した。
「アニマル・スピリットによって次のレベルの経済活動が始まるとの物語が語られている。
それは2017年半ばには明らかに起こっていない。」
チャノス氏は、経済の軟化があくまで循環的なものにすぎないという。
しかし、それでも軽視すべきではないという。
「穏やかな不況でない場合、私たちには対処する方法がないのが問題だ。
FRBの政策金利がゼロ近傍にあるからだ。」