ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授は、今年S&P 500が上昇で終える可能性をいい続けているが、その内容はやや限定的なものに変わりつつある。
「来週はFOMCがある重要な週になる。
通常のFOMCでドットプロットの発表はないが、声明と特にパウエル議長の記者会見のトーンがとても重要だ。・・・
パウエル議長はタカ派的なトーンにならざるをえないだろう。」
シーゲル教授がウォートン・ビジネス・ラジオで21日、今週のFOMCを注目するよう促した。
この数か月、FRBも市場もシーゲル教授が予想するようにタカ派化を遂げてきたが、それがまだ続くとの読みからだ。
シーゲル教授は、米インフレ環境が依然厳しいと指摘する:
- 原油高が進んでおり、ガソリン価格にも3-4週遅れて波及するだろう。
- コモディティ指数はパンデミック前より40-50%上昇。
- 住宅価格・賃金に軟化傾向は見られない。
- オミクロンの状況改善があっても需要も拡大する。
シーゲル教授は、FRBがさらにタカ派的になるなら、これまで予想してきたとおりのローテーションがさらに進むことになるという:
- インカムゲインのあるバリュー株が好まれる。
- 高値になっている「2020年パンデミックでのお気に入り」が売られる。
マクロの専門家であるシーゲル教授だが、この番組では珍しくミクロについてもかなりの分量話している。
業績が拡大していながら市場予想に届かなかったために1営業日で21%超の下落を演じたNetflix株についてだ。
「Netflixはキャシー・ウッドのアークで見られる多くよりはもっと手堅いものだと思う。
Netflixの問題は競争が激化していることで、事業モデルを確立できているかへの疑問だ。」
シーゲル教授は、Netflixがすばらしい事業基盤を有していることは認めている。
一方、料金引き上げや競争激化の中で、新規購読者数が市場期待を満足できるかに疑問が生じているという。
事業の有する『堀』が十分に深いかが重要といい、厚いコンテンツを有するディズニーやマーベルに比べて現状は見劣りしていると示唆する。
教授は、不十分な『堀』の問題として、Zoomの名前も挙げている。
シーゲル教授が個別銘柄について長く語った背景には、単純に会話の成り行きもあったろう。
しかし、それに加えて、セクターや銘柄の選択の重要性を感じている面もあるのだろう。
今後進むであろう金融政策正常化がセクターや銘柄の選別を促し、ローテーションが進むと考えているようだ。
「テーパートレマー(テーパリングにともなう市場の揺れ)を予想しているが、単にテーパリングだけでなく、金利トレマーと呼んでもいい。
そしてローテーションがどんどん進んでいく。
市場全体は下げる傾向になり、バリュー側やキャッシュ側が一番持ちこたえる。」
「テーパートレマー」やローテーションについては従前どおりの予想だが、市場全体が下げ傾向というのは従前に比べて若干下向きかもしれない。
前回、シーゲル教授が弱気スタンスを見せたのは2018年の長期金利上昇時だった。
教授は株価について理論に即した考えを貫いている。
金利上昇が株価に与える影響を重く考えているのだろう。
割引率の見直し、割引率の上昇があれば、長期の資産、バリュー株でさえ現金や短期資産と比べれば長期で、いくらか評価替えの問題を抱えるだろう。
でも最終的には、これまで話したように、S&P 500は上昇する可能性があり、テック・セクターを除くS&P 500は今年上昇するだろう。
テック・セクターを30-35%含むベースでは今年の残り苦戦するだろう。
それでも債券、フィクストインカムよりは良い。