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ジェレミー・シーゲルが説く年内のアノマリー

永遠のブル ジェレミー・シーゲル教授が、ジャクソン・ホールでのパウエルFRB議長の講演についてコメントした。
FRB金融政策の今後と、年内の米国株市場を予想した。


がっかりしたよ。
みんな知っているとおり、市場で利回りが上昇し、実質利回りが上昇し、実質成長率が上昇したのは生産性が強いためだ。
パウエル議長はどれでも指摘できたはずだ。

シーゲル教授がCNBCで、パウエルFRB議長のジャクソン・ホールでの講演についてコメントした。
パウエル議長は実質成長率が高く賃金インフレが続きうると示唆した。
インフレが鎮静化しつつあると考える教授からすれば、逆の考えになる。

米生産性上昇はもちろん良い兆候だが、その評価には様々な意見があろう。
最近の労働生産性上昇が構造的なものと見るならば、確かにそれは賃金インフレの圧力を減殺する。
しかし、労働生産性については割り算(生産÷労働投入)に過ぎないとの冷ややかな見方もある。
大量採用で新人が増えた時に生産性が下がるのは、分母の増大で説明できる。
時間が経って新人が戦力になってくれば、生産性が上昇するのも当然だ。
一過性のものならば、インフレ抑制の効果も長くは続かない。

米国の非農業部門の労働生産性(前年同月比)
米国の非農業部門の労働生産性(前年同月比)

仮に生産性上昇が本物と見るならば、それはインフレ押し下げ効果になる。
シーゲル教授はこの考えで論陣を張っている。
仮に生産性上昇がパンデミック後の一時的ノイズであれば、インフレへの心配を解くのは早すぎるかもしれない。
FRBは、生産性が確実にインフレを抑制するとは見ていないのだろう。

シーゲル教授は、パウエル議長が金融調整について両方の可能性を見るようになっており、データ次第のスタンスを続けていると指摘する。
結果、9月のFOMCでの利上げは考えにくいものの、今後のデータ次第であと25 bpの利上げはあるかもしれないという。
ちなみに、教授自身はこれ以上の利上げは不要との考えだ。
ドル安、原油・コモディティ高、住宅などでインフレ悪化懸念が高まらないかぎり、多くてあと1回の利上げと読む。
逆に利上げの下方リスクが感じられるようなら、もう終わりとなるだろうという。

シーゲル教授は、米国株市場のアノマリーを紹介する。

  • 8月: 9月の前で、特に8月後半は苦戦
  • 9月: 1年で最悪の月
  • 9-10月:「上げ下げが多くニュース次第の月」
  • 11-12月: 改善する

シーゲル教授は、現状「大きなひび割れは見られない」としながらも、市場の調整入りの可能性を認めている。
教授が心配しているのは、最近上昇している実質金利にあるようだ。
仮に利上げや長期金利上昇がなくとも、インフレ(正確には期待インフレ)の低下があれば、実質金利は上昇する。
これは、株式と債券の均衡を債券有利に動かす。
インフレ退治が進んだからといって一概には喜べないのだ。

ただし、シーゲル教授は、9月までに調整が入ったとしても、その後上昇基調を取り戻すと予想している。

(調整後)年の残りは安定的に上げ方向となる。
15-20%の上げだろう。
もしも利上げがもうなく、インフレが低下するようなら、通年で20-25%になるだろう。

文脈から見て「15-20%」も「20-25%」も今年通年のリターンだろう。
通年で「15-20%」とは、調整が入っても年末までに取り戻すといった水準だ。
シーゲル教授をもってしても、今年の出来すぎの相場にこれ以上は望めないのかもしれない。


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