ローレンス・サマーズ

サマーズ:幻滅、期待、計画

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ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)が、心折れることなくトランプ批判を続けている。
口をつぐんだりへつらったりする人への幻滅を語る一方、現在の楽観ムードはほどなく終わると警告している。


善良な人たちの不作為

ドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国の第45代大統領に就任した。
世論調査や就任式に集まった人の数から見て明らかなように、これほどまでに不人気な大統領は近年いない。
なにより問題なのは、支持者が求める方向性と政権の主要政策に整合性がないことだろう。

大統領が既得権益者を排除するというなら、賛成・反対はあろうが、立派な政策だ。
しかし、その大統領が集めた閣僚は金融、不動産、石油といったファイナンスやそれに近い分野の資本家・経営者であり、既得権益者ばかりだ。
これでは、政治屋から金融屋に既得権益を移すだけではないか。
大統領が支持者の望むような社会を本当に作ろうとするなら、重工業や小売などの産業や、広く組合員・中間層から閣僚候補を発掘すべきだった。

進歩主義的な考え方を持つ人たちのトランプ批判が熾烈を極めている。
時すでに遅しではあるが、こうした人たちの批判はなくならない。
サマーズ氏は自身のブログで、あえて敵方である「保守主義の父」Edmund Burkeの言葉を引いている。

「悪が成功を収めるのに唯一必要なのは、善良な人が何もしないことだ。」

ダボス会議出席中、サマーズ氏はこの言葉を思い出したのだという。
善良と思われた人たちが、二枚舌を使い始めたのに幻滅したのだ。

リーダー達に幻滅

  1. 3か月前には聴衆にトランプの会社とは絶対に取引しないと話していた金融界の人たちが、争って新政権を称えている光景
     
  2. 正しく誇りを持って女性やマイノリティの登用に努力していた財界のリーダー達が、大統領の示す不寛容に対して何も発言しようとしない
     
  3. 米国がEU解散を促し、より広くは、開かれた世界システムの支持から手を引こうとしていることに対し、グローバル企業のリーダー達が批判しない
     
  4. 現在の世界の秩序に大きく関与している財界のリーダー達が、中国・メキシコ・中東に関する挑発的なレトリックに対して批判したがらない
     
  5. あまりにも多くの人が、露骨な保護主義を提唱するトランプ政権の閣僚候補を、事業経験があるというだけで称賛したがる

ヒラリー・クリントン候補を支持し高額の講演料を払っていたゴールドマン・サックスが、トランプ政権の屋台骨を支えている現状について驚く人はさほど多くないかもしれない。
しかし、金融界において進歩主義的と考えられてきたJP Morganのジェイミー・ダイモンCEOやBerkshire Hathawayのウォーレン・バフェット氏らがトランプ政権の閣僚を絶賛したことに違和感を覚える人は少なくないだろう。
両人とも長年の民主党支持者であり、バフェット氏は民主党の大口献金者でもある。

(次ページ: 最悪に備えて計画しろ)