海外経済

サプライチェーン阻害が食糧価格を上昇させる:国連ほか
2020年4月3日

国連食糧農業機関(FAO)、WHO、WTOが、コロナ・ショックによる食糧不足、価格上昇を心配している。


食糧供給が不確実になれば、輸出制限の波を引き起こし、世界市場での不足を生み出しかねない。
こうした反応は食糧需給のバランスを変え、価格急騰や価格のボラティリティ上昇を生み出す。

FAOほかが共同声明の中で、コロナ・ショックが世界の食糧供給に過不足を生じさせ、価格上昇を引き起こしうると警告している。
過去の経験から、こうした影響は低所得で食料の輸入依存の大きい国で甚大になるという。

FAOほかは、通商の場面でサプライチェーンが阻害されてはならないと訴える。
労働者の移動・通関手続きの長期化による食品廃棄の発生、輸出規制などが起きないよう求めている。

コロナ・ショックは当初、供給ショックとして心配された。
供給者、物流、小売りの活動がウィルス感染によって阻害されることで、供給不足に陥るのではないかとの心配だった。
その後、問題は需要ショックにも及んだ。
家計や企業など、消費・投資する側が活動停止を余儀なくされ、支出が減ってしまうリスクだ。

食糧についていえば、中身の変化こそあれ、人は食べなければ生きていけない。
供給ショックを心配せざるをえない。
国内での食糧不足が心配になる国も現れる。
そこで考えられるのが輸出制限だ。
結局余ってしまうかもしれないが、とにかく自国に手厚く食糧を持っておきたいと考える。
これが、他国での食糧不足を引き起こす。

自国第一主義の流行に釘を刺すように、FAOほかは国際協調の重要性を訴える。

今のような時には、より少なくではなく、より多くの国際協力が重要になる。
コロナウィルスのためのロックダウンの間、貿易フローが可能な限り自由であるよう全力を尽くすべきだ。

最近、さすがに日本でもコロナ・ショックを総需要不足と表現する人は少なくなった。
金融・財政政策についていえば、現時点で刺激策を講じる意味は少ない。
刺激をしても支出に結びつかないためだ。
今行うべきは、困窮している人を救うための施策だ。

その問題と同時進行で、供給ショックの問題が表面化するのかもしれない。
マスク、消毒薬はともかく、昨今のトイレット・ペーパーやティッシュ・ペーパーのパニック買いを見ても、供給ショックはパニックによって助長される。
これは、マスクのネット販売で取り上げられたように、インフレ的に働く。
食糧でこうしたことが起これば、問題はさらに根深くなる。
こうした心配の中、石油価格が極めて低位にあることはせめてもの救いだ。

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授は、国境の敷居が高まっていることが物価上昇圧力になると指摘している。
国境の敷居はパンデミックによってさらに高まった。
教授は、仮にインフレになれば、金融・財政政策の両方にとって難題になるという。

インフレ上昇による金利上昇を放置すれば、景気には抑制的に働き、政府には財政再建を強いることになる。
金利を低位に抑え込めば、インフレがさらに進みかねない。
コロナ・ショックによって、足元では景気は急速に悪化し、ディスインフレ的になっている。
デフレやディスインフレには良くない面もあるが、供給ショックの可能性が払拭できない今はインフレ的になるよりはるかに良いのかもしれない。


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