ブラックストーンのジョー・ザイドル氏は、米企業のサプライチェーン再構築の動きが投資機会に与えるインプリケーションを説明している。
目新しさはないものの、極めて正統的に論点が整理されており、成長セクター探しの参考になるかもしれない。
「私は概して、ニアショアリングとオンショアリングというマクロ・トレンドとともに、これら歴史的法律がコモディティ、インフラ、運輸、住宅、物流にとってプラスになると予想している。
しかし、潜在的経済効果を評価する時、底流にあるインフレと労働不足を割り引いて考えることはできない。」
ザイドル氏が顧客向け書簡で書いている。
「歴史的法律」とは、バイデン政権が次々と打ち出した産業振興とインフラ整備等のための政策だ。
高いインフレが続く中、その原因である供給制約を解消しようという意図が強く込められている。
国内に生産拠点を戻すオンショアリング、カナダやメキシコに求めるニアショアリングを後押しするには、国内で作る能力、近隣から持ち込む物流網を再構築する必要がある。
「歴史的法律」がそれを後押しするだろうとの見通しなのだ。
そして、そこにもインフレと人手不足が無視できないと但し書きをつけている。
ザイドル氏は、企業のサプライチェーン再構築が長期的な経済成長や雇用にプラスとしつつも、基調的なインフレを押し上げると予想している。
ザイドル氏は、米企業がすでに2018年頃からサプライチェーンを見直し始めていたと指摘する。
それが今回の一連の法律で後押しされるのだろう。
同氏は、カナダやメキシコが世界のサプライチェーンの中で重要度を高めるとし、米国内では南部・南西部へのシフトが続くと予想している。
ザイドル氏は8月初め、バイロン・ウィーン氏とともに、近いうちの景気後退入りはないとする楽観論を否定している。
企業が借金を減らしたことで、利上げの影響を受けにくくなり、金融政策が効果を発揮するまでのタイム・ラグが長くなっていると主張している。
これまでのFF金利引き上げ、市場金利上昇はじきに経済・市場に悪影響を及ぼすと見ているのである。
ザイドル氏は「長期投資家」に注意を呼びかけ、今回のチャンスでも正しい時間軸での投資行動を採るよう提案している。
通常、サプライチェーン構築には5-10年かかる。
この間特徴的なのは、コモディティと労働力の大きな需要が当初先行し、その後何年も成長にプラスの寄与がある。
現在はコモディティの趨勢的ブームの初期だと考えており、特にエネルギー、エネルギー転換、住宅、インフラ、電化の分野で大きな需要増があると見ている。