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サウジアラムコ株を買わない2つの理由:アスワス・ダモダラン
2019年11月23日

アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、上場準備を進めるサウジアラムコのバリュエーションを公表している。


まとめると、驚くことに、アラムコのバリュエーションは3つの方法を用いても、彼らの最終的な評価額に極めて近い。
すべてが1.65兆ドルほどという結果になる。

《バリュエーション学部長》とも呼ばれるダモダラン教授が18日自身のウェブサイトで、サウジアラムコの株価評価を行っている。
教授は3つの考え方からアラムコの株主価値を評価している。

  • 約束した配当を割引: 1.63兆ドル
  • 潜在的な配当を割引: 1.65兆ドル
  • フリーC/Fを割引、債務差引: 1.67兆ドル

めずらしくよく収束した株主価値評価であるといえる。
よく収束した一因として、ダモダラン教授は、アラムコが無借金に近い点を指摘している。
報道によれば、IPOにおける評価額は1.7兆ドルとされているから、こちらともよく摺り合っている。

サウジ政府は当初、1.7兆ドルより高い価格で、かつ諸外国の市場での同時上場を検討していた。
結果、諸外国での需要がさほど高くなく、評価も高まらなかったため、とりあえずサウジ国内での上場を先行させる見通しだ。
発行済み株式の1.5%にあたる最大256億ドルの調達になるという。

報道によれば、アラムコはその後、東京など諸外国の市場での上場も目指す考えだという。
《バリュエーション学部長》の評価から見て割高でないのなら、日本の投資家にもチャンスがあるのだろうか。

ダモダラン教授も、アラムコ株は外国人投資家よりサウジの投資家にとってより魅力的なものになると予想する。

投資対象が株式というより債券の性格が強く、配当が主たるリターンとなり、株価上昇は限定的となることを投資家が認識している限りにおいて、(同株は)手堅い投資になる。
株式を保有してもアラムコの経営への発言権はなく、経営に異議があるなら売却により意思表示するしかない。
リスクを心配するなら、経済より政治を調べるべきで、体制の安定性が主たる懸念になる。

辛口のダモダラン教授が「手堅い投資」というのだから、悲観的にとらえる必要はないのだろう。
ただし、教授は、自分はアラムコに投資しないと明言し、理由を3つ挙げている。

  • 今のところ自身のポートフォリオから定期的なキャッシュフローを得たいニーズがない。
    手前でインカム・ゲインを得れば、手前で税金を払わなければいけない。
  • 原油価格が上昇してもサウジ政府に払うロイヤルティも上昇してしまい、アップサイドは限定される。
  • 化石燃料ならびに間接的にサウド家に投資することは「究極のポリティカリー・インコレクト」投資。

なるほど3点目も重要な点かもしれない。
サウド家をどう見るかは別として、化石燃料に完全に依存する銘柄であるのだから、ESG投資にはなりえないのだろう。

当のダモダラン教授は、もっと割り切っている。
この教授の辛口で不必要なブラック・ユーモアはとてもいい感じだ。

私はたいしてポリティカル・コレクトネスを気にしないし、投資の主たる目的をバーチュー・シグナリングだと信じているような投資家も気にしない。
告白すると、単に彼らの頭がパンクすることを見たいがためにアラムコ株を買う誘惑に駆られている。
でも、それは取るに足らない自虐的なことであり、私はアラムコの投資家になるよりオブザーバーであるにとどめたい。


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