ハワード・マークス

 

サイクルのポイントに賭けろ:ハワード・マークス

Oaktree Capitalのハワード・マークス氏とジャンク債の帝王マイケル・ミルケン氏の対談の第2弾。
偉大な投資家の条件、リーマン危機時のしびれるエピソードが語られている。


「投資において最も重要な2つのトピックとはリスクとサイクルであり、それらはつながっている。
なぜなら、中期的にサイクルのどこにいるかでリスクが決まってくるからだ。」

マークス氏がミルケン氏との対談で話した。
マークス氏は将来を確率現象だと考え、予想に基づく投資行動をとらないことで有名だ。
予想はしないが、確率を重んじる。
確率を知るために、現在がサイクルのどこにいるかを知ることが役立つという。
市場サイクルの終期になれば、市場が弱気相場に転じる確率が高いと考えられるからだ。

投資で成功を収めてきたマークス氏。
しかも、その対象は主に低格付けの債券だ。
そのマークス氏がリスクに敏感なのには、理想の投資に対する見方が存在する。

なんでリスクがそんなに重要かというと、偉大な投資家とそうでない投資家を分けるのが単にどれだけリターンが良いかではなく、そのためにどれだけリスクをとったかであると考えるからだ。
・・・
卓越した投資家とは、抱えるリスクに比例しない良好なリターン、コントロールされたリスクにおける良好なリターンを上げている人だ。

レバレッジを上げてリスク資産を買えば、上げ相場で大きなリターンを得ることができる。
しかし、持続的なマーケット・タイミングが不可能と言われる中で、このやり方は持続可能とは言えない。
たとえビギナーズ・ラックで大儲けをする人が多くいたとしても、その人たちを「偉大な投資家」とは呼ばないはずだ。
彼らは《運のよかった投資家》である。
マークス氏がリスペクトする相手ではない。

逆に、リスク/リターンのトレードオフを上回る投資家、トレードオフ上であってもリスクを中和できている投資家は優れた投資家ということになる。

マークス氏は近著『市場サイクルを極める』のタイトルについて逸話を話している。
このタイトルは出版社から勧められたものなのだという。


「『市場サイクルを極める』にすれば、みんな金持ちになれると思い、本が良く売れるというんだ。
でも、私はサブタイトル『勝率を高めろ』の方が好きだ。
私たちは将来何が待ち受けているかはわからない。
私は予想というものを信じないんだ。」

マークス氏は、リーマン危機に際して下した意思決定についても明かしている。
みんなが「世界の終わりを口にし始めた」頃だ。
マークス氏はルーズベルト大統領の「恐れるべきは恐れそのものだ」という言葉を考え続けていたのだという。

「みんなただ恐れていただけで、何か合理的な恐れを抱いていたわけではない。
・・・
気をしっかり持ち続けないといけない。
1つの希望の光は、歴史・本を読み、サイクルを理解していれば、そうした時の感情の影響を小さくし、切り抜けられる。」

マークス氏らは冷静に自問したという。

「金融の世界は終わったのか、そうでないのか?
私たちの結論は、金融界の終わりは予見しがたい、ということ。
金融界が終わると予見するなら、何をすべきか考えることも難しい。
そして、ほとんどの時、金融界は終わらない。」

勝率は、金融界が終わらない方にあると判断した。
次の質問は「ここで買うか否か」だった。

「ここで投資して金融界が終わるようなことになっても、たいした話じゃない。
でも、投資しないで金融界が終わらなければ、仕事をしなかったことになる。
・・・
分析はむしろ簡単で、私たちは投資すべきと考えた。」

そしてマークス氏は買って買って買いまくった。
買った金額は100億ドル(1兆円以上)に上った。
ファンドはこの投資で巨万の利益を得ている。

マークス氏はサイクルを極めること、勝率を高めることの意義を語る。

買ってさえいれば、何かはほとんど問題ではなかった。
それがそのサイクルでのポイントだったんだ。
そういうポイントがしばらくの間に1回訪れる。
そこでは保守性・用心・リスク管理・規律・忍耐・選択さえ不要で、必要なのはお金とそれを使う神経だけなんだ。


 - 投資 ,