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ブラックロック コンセンサスの脆弱な前提:ブラックロック
2021年3月14日

資産運用の世界最大手ブラックロックが、政策と投資に関してよくまとまった論文を好評している。


低金利の時代が続くというのがコンセンサスになっている。
それが現在の資産バリュエーションや選択的資産配分の中心的根拠とされている。
しかし、それが続くか否かは、ひとえに金利・インフレ・債務の相互作用によっている。

BlackRock Investment Instituteが先月25日付のレポートで、低金利継続を確実視することの危うさを指摘している。

ブラックロックはコロナ・ショック前の2019年、適切に制御されることを前提にヘリコプター・マネーを提唱したことがある。
景気拡大が長期化し、いつかは景気後退が来ると予想される中、金融政策に限界が見えていたからだ。
(通常なら、景気拡大が継続するうちに、金融緩和は巻き戻されるものだが、そうなっていなかった。)
主役を財政支出にバトンタッチし、金融政策は政府債務のマネタイゼーションでそれを支援するという内容だった。
一方で、こうした強調を非常時の手段と明確化し、金融政策の独立性(インフレ目標や出口)を維持することも条件に挙げていた。

ところが、コロナ・ショックは世界の金融・財政政策の風景を一変させた。
戦時を除けば前例のない財政出動が行われた。
しかも、社会はそれに驚くほど寛容だった。

ブラックロックは、欧米における経済活動がコロナ禍でどれだけ失われたかを見積もっている。
リーマン危機後と比べて1/4程度だという。
それに比べ、財政出動の規模は4倍程度にも上っているという。

もちろん、リーマン危機後の財政政策が過小だったとの意見ももっともだ。
米国においては、危機対応にあたったオバマ政権が度々共和党の反対に苦しめられた。
欧州においては、負担する者・支援を受ける者の間で、債務国支援の条件としての緊縮の議論が先鋭になった。
政治的に財政が使えない事情があったから、金融政策一辺倒の政策ミックスになっていた。
潮目が変わったのが(内容において良いか悪いかを別として)トランプ政権の(減税に重きをおいた)財政政策だ。
コロナ・ショックは、それを歳出にまで大きく押し広げた。

ブラックロックは、リーマン危機後との比較でのバランスの悪さを滲ませる。
確かに、仮にリーマン危機後の財政支出が過小だったとしても、あまりにも差が大きい。

「現時点の政策の目標は(景気)刺激ではない。
意図的に停止されている活動を刺激することに理はない。
目標は、コロナ後の世界への橋渡しだ。
私たちは、一度パンデミックが制御されれば、財政支援がなくてもほとんどの活動は自律的に再開すると予想している。」

ブラックロックは、過大に見える財政出動に対して、社会・市場・IMFまで驚くほど寛容だったと指摘する。
何でみんな心配せずにいられるのか。
ブラックロックは1つのポイントを解説している。

実質金利が持続的にトレンドの経済成長率より低い。・・・
これが意味するのは、政府が赤字財政を続けても、債務対GDP比率を安定させる、あるいは減らすことさえできるということだ。
フリー・ランチのように聞こえるだろう。
しかし、これが本当に意味するのは、債務の増分が事実上、納税者ではなく債務保有者によって返済されるということが現在のコンセンサスでの前提になっているということだ。

実質金利とは、インフレ調整後の金利のことであり、債務が実質的価値を増やすペースにあたる。
これより経済成長率の方が高いなら、経済に対する債務の比率は低減していく。
つまり、国は借金しているのに、財政状態が改善することになる。
(回り回って、国民(あるいは納税者)の負担は軽くなる。)
なぜかといえば、インフレが効いてくるからだ。
インフレによって債券の保有者が割を食うことになる。

市場のコンセンサスは、こんなシナリオを前提に成立している。
でも、おかしくないか。
このシナリオにおける、債券投資家とは単なる間抜けなのか。
実際には、債券投資家は株式投資家に比べて、良く言えば理知的、悪く言えばシブチンではないか。
つまり、この均衡は長く続かない可能性が高い。

ブラックロックは、足元でこうした状況になっている理由を「安全で流動性があると見られている資産への需要の増大」と分析している。
投資家であれ、FRBであれ、確かに米国債に対する需要は健在だ。
これが危うい均衡を実現している。
同社は、いつかはこの均衡が崩れると見ている。

インフレ上昇は、記録的な債務水準と実効下限に近い名目利回りと相まって、引き金となりうる。・・・
重要なのは、これがファンダメンタルズによるドライバーではなく投資家心理に関するものである点だ。

多くのバブル崩壊時と同様、この均衡は理屈で予見できるようなものではない。
市場が感じれば、理屈があろうとなかろうと終わってしまうかもしれない。
そうなれば、実質金利は上昇し、債券は急落し、株式も急落し、政府財政は甚大な悪影響を受ける。

ブラックロックは、もちろん中央銀行がこれに対抗しようとし、しばらくは可能だと予想する。
しかし、どんどん状況は困難になっていくとも書いている。
したがって、同社の投資スタンスは2段階になる。

6−12か月のホライズンでは引き続きプロ・リスクだ。・・・
5−10年のホライズンでは、先進国市場の国債についてアンダーウェイトしている。


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