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コングロマリットが失敗するプロセス:ウォーレン・バフェット

ウォーレン・バフェット氏の株主向け書簡の第5弾: コングロマリットが失敗する典型例。


バークシャーはしばしばコングロマリットと称される。
まぜこぜの無関係な企業群を保有する持株会社に使われる、後ろ向きな呼称だ。
そのとおり、それがバークシャーだが、それは一面にすぎない。

バフェット氏が、しばしば批判の的となる幅広い事業・投資ポートフォリオについて言い訳をしている。

コングロマリットとは、全く異なる産業・業種をグループとして営む複合企業体である。
これには様々な批判が存在する。
経営面からは、経営・執行が散漫にならないか、経営資源の配分が有効・効率的に行われるか、十分なシナジーが得られるか、といった具合だ。
経営資源の1つ、カネを例にすれば、事業間の内部金融が競争上の優位になるとの主張もあるが、一方で効率的な資金配分になっていないとの議論も可能だ。
投資の面でいえば、コングロマリット・ディスカウントと呼ばれる現象に如実に現れている。
経営面で(上記のとおり)疑問符がつく上に、投資家が投資対象を評価するのも難しくなる。
保険会社かと思って投資したら、食品の会社かもしれない、エネルギー関連事業の影響が強い、というのでは株を買いにくいと思う人もいるだろう。

バークシャーにはさまざまな観点から、コングロマリットという呼称が向けられてきた。
バフェット氏は、そうした懸念が自社には当たらないと言いたいのだ。
同氏は、うまくいかないコングロマリットの典型例を、生々しい語り口で語っている。
その失敗のプロセスとは

  1. コングロマリットは買収ターゲットをまるごと買おうとするが、すばらしいターゲットは身売りしようとは思わない。
  2. ターゲットについて妥協に迫られる。
    「それは、釣りするのにすばらしい池ではない。」
  3. 凡庸なターゲットでも莫大な買収プレミアムを払わなければならない。
  4. コングロマリットが手を出す買収コストの抑制策:
    自社の株価を吊り上げ、株式交換で買収する。
    買い値は高いが、そのために払う自社株も高い。
  5. 自社の株価を高めるための「促進技術や『創造的』会計操作」が行われる。
    「よく言って欺瞞的、しばしば詐欺の一線を超える。」
  6. 「投資の幻影は驚くほど長く続きうる。」
    ウォール街やメディアが応援し、高い株価が成功の証とされる。
  7. いつか終わり、「王様が裸であることがわかる」。
    「ジャーナリスト、アナリスト、投資銀行家の作品は企業のスクラップ置き場行きに。」
  8. コングロマリットは最悪の名声を得る。

バークシャーはどこが違うのか。

  • 投資先企業のまるごとの買収にこだわらない。
  • 投資先について妥協しない。
  • 買収対価にシビア。
    したがって、自社の株価を吊り上げようとせず、不正にも手を染めない。

確かにいくつも違いがありそうだ。

その一方で、バークシャーをコングロマリットと呼ぶ人々にもそれなりの理由がある。

バークシャー・ハザウェイA株(青)とS&P 500指数(赤)の動き

2000年以降のスコープで見て、バークシャー株はすばらしいリターンを上げてきたことがわかる。
その一方で、最近数年に注目するとどうか。

バークシャー・ハザウェイA株(青)とS&P 500指数(赤)の動き(2016年以降)

特にパンデミック以降、決していいとはいえないように見える。
何より、バフェット氏が莫大な自社株買いを行い、その規模を拡大させていることは、同株が安いと考えられている証左である。

バフェット氏もチャーリー・マンガー氏も永遠に経営を続けられるわけではない。
次世代の経営体制となった時、バークシャーの組織や株価に何が起こるか。
典型的なコングロマリットとは違う、という主張だけで盤石な将来が約束されるとはもちろん限らない。


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