政治

コロナ後の世界、米国の処方箋:ジェフリー・サックス
2020年6月25日

ジェフリー・サックス コロンビア大学教授のRTインタビュー第2弾: 米国が「良い社会」になるために必要な変化について語られている。


コロナ・ショックは信じられないほど(変化を)加速させた。・・・
この短期的危機から長期的な変化が生まれることになるだろう。
経済全体で起こるだろう。

サックス教授が、IT技術の促す社会・生活・仕事の変化についてコメントした。
コロナ・ショックはこうした変化を一気に進める触媒の役割を担った。
教授は、この変化が質や利便性等の向上につながる点を素直に認めている。

「これはAll or Nothingの話ではない。
オフィスに週1回おそらく2回行くのはいいことだ。・・・
もっと余暇があり、きれいで、地球や身体に負担の少ない世界に変化できると信じている。」

コロナ・ショックで私たちが目にしたテレワークなどへの変化は、素直に技術の進歩の成果として認めるべきものだ。
その果実を拒む理由は何もない。
しかし、何事にも明るい面と暗い面がある。

サックス教授は、その暗い面にも対処すべきと釘を刺す。

これが行き着く先は、みんなが通勤時間の減少、余暇の拡大、お金の節約などの恩恵を少しずつ受けるか。
あるいは、みんなが基本的に大きなテック企業のためだけに働くことになるのかのいずれかだ。
このエピデミックで最大の利益を得たのはジェフ・ペゾス(個人)なんだ。

コロナ・ショックでは、巣ごもり需要やIT活用への期待から大手IT企業の中に利益・株価とも潤う会社が見られた。
結果、創業者で大株主であるペゾス氏やマーク・ザッカーバーグ氏の個人資産が大きく増えることとなった。

「ばかげている。
Amazonは基本的に税金を納めていない。
2019年に少額を収めた以外納税していない。
これを続けるわけにはいかない。」

サックス教授は、Amazonの倉庫で多くのコロナウィルス感染者・死亡者が出たことも言い添えている。
もちろんこうしたことはペゾス氏が意図したことではないが、同じ舟に乗っているはずなのに、天国と地獄だ。
株主が裕福になっていく裏で、社会の重要な基盤を支える裕福でない人たちに皺が寄る構造が出来上がっている。
彼らは十分な医療保険さえ加入できないことが多い。

私たちは税制が必要で、お金のかかる医療・教育などの基本的な需要を満たす制度が必要だ。
それには、大、大、大金持ちから社会の他の人たちへの所得の再配分が要求される。
さらに、人々にそこそこの職を保証する必要がある。

米国にもこうした欧州的な良心を備えた人がいる。
日本の政府は欧州ほどは大きくないが、それでも米国よりはだいぶ大きい。
その日本から見ても、米国の政府・再配分の規模はあまりにも小さい。
《勝者総取り》こそ社会の活力としてきた米国が、今やむにやまれず見直しを迫られているのかもしれない。

(余談になるが、インタビューしたRT(ロシア・トゥデイ)はロシア国営の国際放送。
もちろん、ロシアのための情宣活動が本当の目的なのだろう。
少しいかがわしいコメンテーターや米政府に批判的な米識者に話させることが多く、これらは他人(しかもアメリカ人)の口を借りた米国批判になっている。
フェイク・ニュースを流したり情報操作を行うなどの批判もあるが、それを言い始めたら某米保守系メディアはどうなのかという口喧嘩になってしまう。
RTの(特にノーカットの)インタビュー映像の中には時々素晴らしいものがある。
今回もその一例だ。
サックス教授の信念が余すところなく語られており、わずか25分だが実に内容が濃いビデオになっている。)

サックス教授の考えは実に潔く問題を割り切っている。

誰も1,500億ドル(約16兆円)も保有すべきでない。
どんなに賢くても、どんなに賢く起業したとしてもだ。
そのほとんどは徴税すべきだ。
米国は、そんな異常な所得・富の格差の下では機能しない。

サックス教授は、良い社会とは様々なものが混成した社会だとし、その特徴を挙げている。

  • 政府の強い役割: 規制、所得再配分、社会サービスの提供。
  • 市場: 起業を後押しし、柔軟性を備える。
  • 市民組織。

これら主体のいずれかが突出した優先順位を持つのではなく、それぞれが折り合いをつけ中道を図るべきだと、サックス教授は信念を述べる。

しかし、米国の場合、市場が圧倒的な力を有し、政府と市民を支配している。
大企業・富豪が選挙資金を出し、政治を操り、社会を従えている。
コロナ・ショックが大恐慌以来の経済危機であるならば、そこに何かヒントがあるはずだ。

これ(金が支配すること)では社会正義、包摂、国家の適切な役割にはつながらない。
私が最も偉大な大統領だと思うフランクリン・ルーズベルトが行ったニューディール政策は中道だった。
政府と企業がある時は対立しある時は協力した。
これが正しいやり方だと思う。


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