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米ドル コロナ後のドル相場:唐鎌大輔氏

みずほ銀行の唐鎌大輔氏が、コロナ後のドル相場に与える米政府債務増大の影響について語っている。


世界中でいよいよ金利が消滅していることを踏まえれば、ショックの終息に合わせて株式を筆頭とするリスク資産価格に資金が流れることは、容易に想像がつく。
では、為替市場におけるドルの立ち位置はどのように変わってくるのか。

唐鎌氏がDiamond Onlineで、コロナ後の為替相場について、政府債務とドルの信認との関係から論じている。
今後もドルへの需要は続くと予想するものの、米政府債務増大への懸念もぬぐえないからだ。
唐鎌氏は、米政府債務が2020-21年にも対GDP比130%に迫るとし、これが第2次大戦後の120%を大きく超える水準であると紹介している。

一方、足元でのドル不足が解消している点も紹介している。

「すでに通貨スワップ市場では一連のドル資金供給オペが奏功し、ドルが対ユーロ、対円でプレミアム(すなわちドルが余っている状態)に転化している。
ドル調達難とドル高をリンクさせて議論が進んでいたのはもう一昔前の話だ。」

つまり、パニック時のドル不足は一服したわけだ。
ならば、ドル相場は平時のロジックに戻っていく可能性がある。
短期なら金利差かもしれない(ただし金利差は当面動きそうにない)し、中長期なら双子の赤字、物価なのかもしれない。

唐鎌氏は、双子の赤字や物価と密接な関係にある「ワールド・ダラー」(世界で流通するドルの総額の目安)に着目している。
なんとも懐かしい響きのある言葉だ。
リーマン危機後によく引き合いに出された数値である。
その定義からして、ワールド・ダラーとドル相場とは逆相関にあることが想像される。

ワールド・ダラー前年比(青、左)とドル実効為替レート(赤、右)
ワールド・ダラー前年比(青、左)とドル実効為替レート(赤、右)

実際、特徴的な時期を除けば、この2つの数値は逆相関しているように見える。
唐鎌氏はドル相場の先行きを予想する。

世界におけるドルの総量(のイメージ)が膨張するに従い、穏当なドル安が進む可能性は高いというのが筆者の基本認識である。
一方で、それが暴落という展開に至り、しかもそれが定着するような事態は、米国以外の通貨当局が容認しないだろう。

奇をてらうことのない正統的な予想だろう。
こうした予想は、投資の前提とするメイン・シナリオの一部として用いるのにふさわしいものと思う。
ただし、これを安易にドル円に広げてはいけない。
唐鎌氏がここで結論したのは、あくまでドル安傾向であって、円高傾向ではない。
円安ドル安の可能性が否定されたわけではなく、それについては全く異なる角度(円相場への視点)の検討が必要になろう。

むしろここでもう少し掘り下げたいのは、久々のワールド・ダラーの登場だ。
なんでワールド・ダラーは危機後に注目されるのか。
もちろん、金融緩和実施にともなうドル流通量増大がその主因だが、もう1つ気になる点がある。
ワールド・ダラーとドル相場がともに急上昇する局面だ。
上のグラフから明らかなように、リーマン危機時に両者は急騰し、コロナ・ショックでもそれが見られている。
パニック時だけ、両者の逆相関が崩れる、しかもとんでもなく順相関に転じて上昇してしまうのだ。
こういう動きは投資においてとても対処が厄介になる。

コロナ・ショックは一過性のショックで済むとは限らない。
むしろ第2波、第3波が危惧されるタイプのショックだ。
もしも中長期のドル安傾向が「穏当」なものであるならば、投資家はむしろ厄介なポロロッカのリスクに神経をとがらせるべきかもしれない。


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