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ゲームのルールを変えうる3つのトリガー:モハメド・エラリアン
2020年1月14日

アリアンツ首席経済アドバイザー モハメド・エラリアン氏が、足元の米市場を分析し、市場のロジックを変化させうる3つのトリガーについて語っている。


すべての人にとっての課題は、前向きな短期と、ベン・バーナンキの言葉を借りれば『通常でない不確実性』の中期の間で強まる綱引きをどう乗り切るかだ。

エラリアン氏が9日Yahoo Financeで、短期の強気と中期の弱気の相反する内容について説明した。

エラリアン氏によれば、現在、経済学者、政治学者、国際関係の専門家らは、現状に対して極めて慎重な見方をしているという。
これが中期の弱気である。
一方で、投資家はそうした中期での弱気な見方に対してウェイトを置かなくなってきたのだという(Yahoo Financeによる別ビデオ)。

「投資家は・・・より慎重なトーンから概して離れつつあるようだ。
・・・市場は『これはすばらしい』と言っている。」

中期の弱気を市場は受け付けなくなっているのだ。
しかし、これが短期の強気の主因ではないとエラリアン氏は言う。

しかし、これが資産価格を押し上げているわけではない。
資産価格を押し上げているのは、極度に緩和的な流動性だ。
特に中央銀行からの流動性だが、さらに企業のバランスシートのものもある。
これは継続するだろう。

エラリアン氏は、足元の市場の上昇の主因を業績や市場心理には求めていない。
根っこのところに、中央銀行の量的緩和や企業の配当・自社株買いによる流動性供給が存在すると言っているのだ。

エラリアン氏は、この相反するように見える見方が2019年には両方正しかったと説明する。

「2019年には正しかった。
だからこそ、S&P 500のリターンが30%で、債券インデックスのリターンが12%というようなとても珍しい結果が生まれたんだ。
通常は、これらがこんな動きをここまで見せることはない。
両方の見方が正しかったんだ。」

株式は短期の強気に基づいて上がり、債券は中期の弱気に基づいて上がったとの解釈なのだろう。
短期では株式にプラスのモメンタムが見られるのに、数か月後以降となると債券が様々な不確実性を織り込んでいく。
能天気な株式、心配性の債券といったところだろうか。

エラリアン氏は、米市場のスタンスを単純明快に説明する。

市場はワシントンでの出来事を無視している。・・・
市場の基本的な見方は、中央銀行が支えてくれる限り、それが重要であり、ほかのすべては無視しようということだ。

実際、この戦略は近年うまくいってきたと、エラリアン氏は振り返っている。
何かの材料で下がった時に押し目買いをすれば高率で儲かるといった相場が続いてきた。
しかし、これがいつまでもうまくいく保証はないと警告する。
エラリアン氏は、この戦略が成り立たなくなるきっかけを3つ想定している。

  • 大きな政策の誤り
  • 市場における、外因性によるものを含む流動性にかかわる事故
  • 極めて大きな地政学的・政治的ショック(米イラン対立で言えば、エスカレートや緩和ぐらいでなく、戦争勃発)

エラリアン氏は、短期と中長期の綱引きに巻き込まれる投資家について、こう形容している。

もしも短期戦術の投資家なら、人生は比較的容易だ。
もしも長期の趨勢的・構造的観点による投資家なら、人生はどんどん難しくなる。

なんとも感慨深いアドバイスではないか。
かつて世界最大の債券ファンドPIMCOをCEOとして債券王ビル・グロス氏とともに率いたエラリアン氏。
そのエラリアン氏が、中期的に幅広い米市場について困難が増すと予想している。

ここで思い浮かぶのは、米国株市場の福禄寿とでもいうべきジェレミー・シーゲル教授だ。
教授は最近、ホライズンごとのアドバイスとして少し違う言い方をしていた。
短期のトレーダーなら(タイトな値幅で投資しているかぎり)勝負すればいい。
長期投資家なら大丈夫だから、今のポジションを維持すべき。
といったアドバイスだった。

短期については2人のアドバイスに大きな違いはないように聞こえる。
しかし、長期については、両者の見方は真逆のようにさえ感じられる。
この違いは何なのか。
単に、心配性な債券投資家と能天気な株式投資家の感じ方・表現のしかたの違いなのか。
それとも本当に真逆の予想であり、いつか白黒がつくのだろうか。


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