クルーグマン:減税は誰のもの?

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ポール・クルーグマン教授が、共和党減税案の効果について試算している。
その結論は、減税の恩恵が金持ち・大企業ばかりに回るといったありふれたものではない。


発端はシンクタンクTax Foundation(TF)の試算である。
TFはTFモデルという考え方を導入し、共和党の減税案が米GDPを3.9%上昇させるとした。
このシンクタンクはその名からわかるように、よく言えば血税の無駄遣いをなくす、悪く言えばとにかく税を減らすことを目的としている。

クルーグマン教授からするとよく知った敵なのだが、今回もそのミスリーディングな試算の誤りを指摘しているのだ。
教授はNY Timesのブログで、TFモデルそのものを信じていないとしながら、あえて敵のモデルを用いて誤謬を明らかにしている。
こうした古典的な解釈法を話させると、この教授は天下一品だ。
教授はTFモデルの前提をこう解説する:

「TFモデルでは、国際的な資本移動のおかげで資本が稼がなければならない税引後リターンは一定であると仮定している。
税率引き下げと資本流入が、減税をオフセットするだけ税引前リターンを押し下げる。」

教授はこの前提から、基礎の経済学を回想させる模式図を用いて、減税の効果を解説する。

  • 横軸は資本ストック: 外国からの資本流入があればプラスになる。
  • 縦軸は資本リターン: r*は税引後の要求リターン(これをTFモデルでは一定と置いている)。
    法人税率tでは税効果でr*/(1-t)のリターンとなる。
    tをt’まで引き下げればr*/(1-t’)に低下する。
    (税率がゼロになれば、r*まで低下する。)

すると、限界生産線はこうなる:


資本の限界生産線による減税効果
資本の限界生産線による減税効果

減税がなされると、貯蓄不足の米国は外国から資本を調達し生産を拡大する。
資本ストックが増えるほどに資本のリターンは逓減していく。
減税による生産の増分は a+b+c の面積となる。
TFが示したGDP増分とはこの部分だ。
しかし、クルーグマン教授は指摘する。

「前提により、流入した外国資本はr*のリターンを得る。
したがって、cはGDPの増分であるがGNIの増分ではない。
米経済にとっての真の利益は a+b にすぎない。」

外国から追加の資本を調達せざるをえない米国では、GDPが上昇しても、その一部が外国の取り分に取られてしまうとの指摘である。
クルーグマン教授は、仮の数字を置いて、どの程度の配分なのかを試算している。

  • GDPの増分(a+b+c)= GDPの3.45%相当
  • うち海外資本のリターン(c)= GDPの2.40%相当
  • 米国の取り分(a+b)= GDPの1.05%相当

ほとんどが海外に持っていかれて、米国の取り分にはならないのだ。
クルーグマン教授は、この誤謬の教訓をこう結んでいる。

『自国は小規模開放経済だから資本はいくらでも入ってくる』という議論をするなら、その提唱者が思い描くより経済的にはるかに楽観できない話に終わるということだ。

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