クルーグマン:いつか米ドルは大きく調整する

関税は貿易収支に無関係?

当然、次の興味は一律の関税だろう。
ここでのアプローチはかなり異なり、国際収支の均衡から逆算して考えている。
つまり


 経常収支 + 資本収支 = 0

の関係だ。
クルーグマン教授は、資本収支がリターン良好の国に流れ、このマネー・フローを貿易収支でオフセットするように為替レートが調整すると解説する。

「この単純なシナリオでは、資本が米国に流入する限り、関税は貿易赤字の減少につながらない。
単に米ドル高となり、米国製品の競争力が低下するだけだ。
輸入は減少するが輸出も減少し、貿易は減るが貿易収支は不変となる。」

しかし、実際には保護主義の閉鎖性が資本フローを阻害するという。
海外からの投資で回っている米国には致命的な論点だ。
投資家は閉鎖的な市場への投資をためらうし、リターンの持ち帰りができるのかにも不安が生じるのだという。
受け入れた投資にリターンを返すには、さらに借金を繰り返すか貿易収支を黒字化しなければいけない。
このことが、皮肉な効果を及ぼす。

貿易赤字はいつか反転する

クルーグマン教授は貿易収支の長期的な視点を語る。


「貿易赤字とは常に一時的な現象であり、いつか余剰に転じる。
逆もまた真なりだ。
かつて大きな貿易黒字だった日本のケースを考えるとよい。
海外投資からの所得により今も経常収支は黒字だが、現在では財の貿易では大きな赤字となっている。」

話がだいぶダイナミックになってきた。
米国、そして日本も貿易収支はかつてより悪化している。
これら貿易赤字が一時的な現象であるなら、いつか反転することになる。
しかし、現在のレジームが続く限り、日米が貿易黒字に転じるとの予想はしにくい。

貿易収支黒字化は通貨下落によって起こる

クルーグマン教授は貿易収支の黒字化について

「他の条件が同じなら、実質為替レートの減価によって起こる」

と書いている。
つまり、いつか米ドルや円に大きな下落が起こり、日米の輸出競争力が回復するということだ。
ある意味、日本ではこのシナリオが起こり始めているといえるかもしれない。
では、この調整過程で投資には何が起こるのか。

「この為替レートの変動は、国際投資のリターンを減じてしまう。」

とし、海外からの投資を阻害してしまうと教授は予想する。
皮肉にも、米国は対内投資の減少によって貿易赤字の減少を実現するというのだ。


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