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ギャンブルは賢くても長続きしない:ケネス・ロゴフ
2020年6月18日

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、政府・中央銀行のコロナ・ショックへの対応策を支持しながらも、あわせ持つ危うさについてコメントしている。


今は多くのことが起こっているから、現時点で実験的政策を採るのは得策ではない。
しかし、2年後、政府がさらなる財政刺激策を講じた後、FRBが長い間保証、経済のラスト・リゾートを演じた後に、まだ経済が成長せず金利が極めて低ければ、マイナス金利政策は必ず俎上に上げるべきものだと考えている。

世界的なチェスの名手がBloombergで、金融・財政政策の数十手先を見通した。
ロゴフ教授は従前からマイナス金利の支持者だ。
マイナス金利は伝統的金融政策の延長であり、すでに実質ベースではマイナスの実質金利を経験しており、過剰に特別視すべきでないと主張してきた。
今後、他の政策手段をやり尽くした後になっても検討対象から除外するのは愚かだと漏らしている。

ロゴフ教授がすぐの検討を求めないのは、実験的政策である他にもう1つ理由がある。

マイナス金利は効果を発揮するが、それには正しいやり方を採らなければいけない。
欧州は正しいやり方でやらなかった。
タンス預金を防ぐ手立てを行い、金利をかなり深くマイナスにしないといけない。

マイナス金利政策には、タンス預金を防ぐための準備が必要だ。
せっかくどこかの金利をマイナスにしても、人々がそれを逃れるために現金を持つようになれば、効果がそがれてしまう。
それを防ぐには、例えば通貨の電子化を行い、預金等だけでなく現金にもマイナスの金利を付けることが必要になる。

ロゴフ教授は、現金が不正に使われること、マイナス金利政策の妨げになることを著書『現金の呪い』で指摘し、紙幣の廃止を主張した。
もう1つ教授の著書で有名なのが『国家は破綻する』だ。
ロゴフ教授は、先々深刻になるであろう政策課題を先回りしてきた。
つまり、債務問題だ。

キャスターから「債務の大規模な国有化」(政府・中央銀行による貸出・資産買入れ)についての妥当性を尋ねられると、コロナ・ショックの特異性を指摘している。
かつての危機では、大きな要因が企業の側より危機の側にあった。
政府・中央銀行が民間セクターを救うロジックはこうだった:

「『この会社には支払い能力があると考えていたが、流動性問題が起こった。
だから流動性を供給し、会社が資金調達を継続できるようにし、不要の破綻を防ごう。』」

以前の危機では、危機が終われば企業は自然に回復するから、それまでのつなぎを面倒みようというものだった。
ところが、コロナ・ショックでは、危機が終わっても、多くの企業・産業が「抜本的な変化」を求められるかもしれない。

これら会社は、ウィルスのために問題を解決するのではなく、FRBのおかげで流動性を保っている。
問題が表面化することになろう。

救済された企業・産業が必要な変化を必要な時までに済ませられるかはまだわからない。
ただ、FRBが取捨選択なく助けている段階だ。
このやり方について、ロゴフ教授は、事態が早く改善するなら低コストで大きな効果のある政策として評価されることになると言う。
裏を返せば、事態の改善に時間がかかるなら、効果が今一つなのにコストが大きく積み上がるということだろう。

FRBはギャンブルをしている。
たぶん賢いギャンブルなのだろうが、完全にギャンブルだ。
もちろんこれが永遠には続かない。
経済のすべての信用について納税者の保証をつけることはできない。


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