海外経済 投資

キャシー・ウッズ銘柄への圧力は続く:ジェレミー・シーゲル
2021年3月30日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授が、米国株のファクター・ローテーションやインフレ上昇シナリオについて語っている。


「利回りは落ち着いた。
10年債利回りは1.75%まで急騰し1.63%へ反落した。
その後もローテーションの売りは鈍化し、先週はかなり止まっていた。」

シーゲル教授がウォートン・ビジネス・ラジオで、米長期金利上昇と米国株ファクター・ローテーションが鈍化していると述べた。
グロースは金利上昇の悪影響を受けやすい。
バリューは、景気回復期にアウトパフォームする傾向があり、現状の金利上昇は景気回復を連想させる。
今年に入ってのこうした強弱の変化が、このところいったん止まっている。
しかし、シーゲル教授は、ローテーションが継続するとの考えを変えていない。

私はこれがグロース投資家に強い材料になるとは思わない。
経済は再開し、利回りは上昇し、天文学的価格での買いを正常化するだろう。
こうしたキャシー・ウッズ的な銘柄にはプレッシャーがかかっており、それは続くだろう。

ただし、シーゲル教授は現在のテック・セクターについて、2000年までのドットコム・バブルのようなクラッシュを予想しているわけではない。
今回は「方向が少し下がった」程度だという。

インフレ上昇についての質問を受けると、シーゲル教授は想定するシナリオを披露している。

  1. 一時的インフレ急騰: FRBは容認し、経済がブームになるまで緩和を継続。
  2. 慢性のインフレ: 一時的インフレがインフレ期待を変えるなどして起こりうる。
  3. FRB金融引き締め: 慢性のインフレには介入せざるをえなくなる。
  4. 景気後退: 金融引き締めとなれば、小さな景気後退は不可避。

FRBの介入がありうると想定しているから、1桁の上の方から2桁といった物価上昇率は予想されないという
FRBはインフレ退治においてボルカー時代の経験知があるため、インフレが制御不能になるようなことはないという。
シーゲル教授は、ボルカー時代に言及しながら、「それほど強烈なものにはならない」とも言っている。
ボルカー・ショックはまさに痛みをともなう荒療治だった。

なぜ1970年代あれほど長くインフレに苦しむことになったのか、もっと早くインフレを退治できなかったのかとの質問に対しては、シーゲル教授は(貨幣錯覚に根ざした)自ら「名目金利の幻影」と呼ぶ仮説を披露した。

「金利を引き上げると、金融が引き締まったと思う。
しかし、金利はインフレほどには上昇せず、実質金利は下がることがある。・・・
実質金利の議論がなされておらず、ついにそれが議論されると、8%金利における12%インフレが引き締めでないことがわかる。
これを知っているボルカーがFRB議長になり、金利を20%にした。」

これはある意味当たり前の正解である。
ボルカーの政策を誤りという人はほとんどいないが、それでも20%のFF金利は多くの人に痛みをもたらしたのだろう。
シーゲル教授は「それほど強烈なものにはならない」といっている。
しかし、教授が将来のインフレを3-5%と予想するなら、ブレーキが踏まれるのは5%超あたりからだろう。
そこで必要となるFF金利は6-7%ではないか。
これは、高金利を知らない若者世代には気絶するような高金利であり、資産価格の形成を根本的に変えかねない水準だ。
識者がいうように、金利が上がっても成長が向上するなら資産価格に悪影響は及ばないというのが理屈だ。
しかし、金利が上がったからといって、成長率が6-7%、あるいはその半分でも恒常的に上昇するなどありえるだろうか。
短期的な市場予想では、強気予想が正解である分の方が大きく見える。
しかし、強気派の論理にも定量的な矛盾がありうることを注意すべきだろう。

最近の投資家の興味の多くは温故知新に向けられている。
温故知新を実践するには生き字引のような老人の存在がありがたい。
冷静に過去と現在を比較・分析し、理屈に溺れず現実的に将来を予想できる存在は貴重だ。

シーゲル教授も、この点を強く意識しているようだ。

私は、昔を経験したことからくる見方を用いようと努めている。
私はみんなより年寄りだから、観察し、注目し、過去との比較をしようとしている。
しかし、同時に、今が違うところも知っている。
あまりにも多くの人がサイクルに注目し、それぞれの共通点から、経済が良くなるはず、良い先例がある、こういう政策対応がなされる、と言いたがる。


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