ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが今月4日に発表した第3四半期決算では、自社株買いとともに、9月末の現金等価物が1,572億ドル(2.3兆ドル超)に上った点が注目された。
ここから推測される可能性は3つだろう:
- お買い得の会社・株式がなかなか見つからない。
- 自社株に妙味がある、または第三者の株より有利と考えている。
- 先行きについて株安を予想している。
、
最初の2つはともかく、3つ目は正しいだろうか。
こうした可能性が推測される背景には、バフェット氏がこれまで株価暴落などにおいて優良株等を安く手に入れた事実が存在する。
ただし、これは決して同氏が他人に奨めてきた話ではない。
このアプローチは一種のマーケット・タイミングだからだ。
バフェット氏はむしろ、優良株の長期保有を奨めてきた。
自身は底値拾いにも果敢に取り組むが、他人には必ずしも奨めない。
1996年5月のバークシャー株主総会に、これに関連する部分があった。
この年の12月、ロバート・シラー教授のレクチャーを受けたアラン・グリーンスパンFRB議長(当時)は、有名な「根拠なき熱狂」という言葉を用いた講演を行っている。
当時の米経済はIT革命、生産性上昇などにも背中を押され、2000年のドットコム・バブルに向けて強気相場を続けていく。
バフェット氏はある株主から3つの銘柄に投資すべきか尋ねられ、こう答えた。
概して、偉大な会社の株価が本当にばかげたものでない限り、あなたがそれを見つけたと感じるなら・・・
定義を言うと、偉大な会社とは30年間偉大であり続ける会社だ。
3年しか偉大でないなら、それは偉大な会社じゃない。
半年後に中央銀行総裁が「根拠なき熱狂」を語るような状況でも、本当に「偉大な会社」なら投資すべきとバフェット氏は言いたかったのだ。
30年放っておいても「偉大」であり続ける銘柄に投資することが、投資家にとっての理想と考えているのだ。
私は、単純にそういう会社を保有すべきだと思う。
・・・それを見つけるのはとても難しいんだ。
資本主義の世界にも諸行無常は当てはまる。
当然のことだが、30年といったホライズンにわたり「偉大」であり続け、目をつぶって保有し続けることができる銘柄はそうはない。
そうそう見つかるものではない。
(また、正解だったかどうかは後にならないとわからない。)
バフェット氏は、足元の相場を見て買い控えるべきでないと話している。
座して、パニックの最中に買えることを願うのは、疫病のようなものを心待ちにする葬式屋のような態度だろう。
それが素晴らしいテクニックになるとは思えない。
注意したいのは、これが「偉大な会社」を想定している点だ。
ありきたりの銘柄について述べた話ではない。
「偉大」な銘柄はマーケット・タイミングのノイズに左右されないという話だろう。
日米ともに株式市場に元気が戻ってきた。
過去の市場サイクルの経験則どおりの展開だ。
FRB利上げ終了後に、米市場は《最後のひと上げ》を演じる。
(ただし、利上げ終了は、事後にしかわからない。)
仮に今サイクルでの利上げが打ち止めとなったのなら、ここで上げるのは経験則どおりだ。
また、利上げ打ち止めとなる可能性が高いなら、それでも上げる要因となるのだろう。
問題は、その後の展開だ。
現在が新たな強気相場の序章なのか、それとも《最後》は《最後》なのか。
経験則は後者を支持しているように見え、この後に弱気相場がやってくる。
そう思う人たちは、椅子取りゲームのような感覚でいるのだろう。
上げの後に弱気相場を予想する人の中には、待ちを決め込んでいる人もいるはずだ。
おそらくバークシャーにしても、そうした思惑がゼロではないだろう。
1996年のバフェット氏の発言は、それに対する1つの答だ。
つまり、ポイントは個別銘柄にあるのだろう。