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ウィーワーク救済のソフトバンクG株は割安か:アスワス・ダモダラン
2019年11月16日

ニューヨーク大学アスワス・ダモダラン教授が、ウィーワークへの投資とその大株主について論理的かつ冷徹にディスっている。


1年前には、300年の計画と数千億ドルの資本を手にした孫正義氏を時代の先を行く、スマート・マネーを象徴する人物と見る人が多かった。
今日のコンセンサスは、彼は衝動的かつ感傷的な投資家であり、その投資判断は信用できないというもののようだ。
多くの場合そうであるように、真実はどこか中間にあるのだろう。

ダモダラン教授が自身のブログで、大株主によるウィーワーク救済劇について書いている。
《バリュエーション学部長》のあだ名のとおり、そう長くないブログの中で極めて総括的に精緻に議論がなされているので、一度読んでみるとよい。
ただし、その中身は淡々としていながらとても辛らつだ。

中でも教授が問題視するのは、ウィーワーク救済の判断が過去に引きずられたものだったのではないかというもの。
「サンク・コストの原則」を紹介している。
サンク・コストの原則とは、ある行動の意思決定をする際に、すでに支出してしまったコストを勘案すべきでないという原則だ。
投資で言うなら、ある投資で負けたからといって、それを取り返そうという理由でさらに投資してはいけないということ。

「ソフトバンクGの新たなウィーワーク投資においては、ソフトバンクの80億ドルのウィーワーク投資の理由は、将来キャッシュフローから追加投資金額より多くを得られることではなく、過去に75億ドル投資していたことであるように示唆される。」

ダモダラン教授が厳しいのは、今回の救済において、その経済的合理性の説明が欠けているためだ。
教授は、大株主側の説明を紹介する。

『論理は単純だ。
時間が解決する・・・そしてV字回復するだろう。』
しかし、私には何もロジックがわからなかった。
時間だけでは300億ドルの借金の問題は解決しないし、急回復のためにノンコア事業を削減するにもコストがかかる。

ダモダラン教授は、大株主がサンク・コストにとらわれている背景を想像している。
多くのお金を持っているほど、ファンド・マネージャーが優秀であるほど、過去の失敗を認めるのが難しくなることがあるのだという。

サンク・コストの問題は他にも指摘する人が多い点だ。
パーシング・スクウェア・キャピタル・マネジメントのビル・アックマン氏も、今回ウィーワーク救済はあきらめるべきだったと公言している。

もっとも、これが本当にサンク・コストであるかについては議論があろう。
投資に携わったファンド・マネージャーからすれば、真の目的はファンドの成功ではなく自身の立身出世かもしれない。
また、運用会社にとっても、第2号ファンドの投資契約を締結するまでは、何が何でも失敗を確定できないと考えたかもしれない。
これらはいずれも将来のキャッシュフローに基づいた意思決定だから、サンク・コスト原則には触れない。
ただし、ファンドの投資家からすれば、著しいサンク・コスト原則への抵触と映るだろう。
もしもそうなら、典型的なエージェンシー問題である。

ダモダラン教授はテーマを一般化し、投資家を分類する軸について触れている。
賢いか、愚かか。
教授はこういう分類を好まない。
幸運か、運が悪いか。
これは投資が運しだいという誤解を生みかねない。
教授が分類したのは、謙虚か、傲慢か、である。

謙虚な投資家は、成功した時は自身の腕だけでなく幸運が強く効いたと考え、失敗した時はそれが投資の一部であり学習の機会だと考える。
傲慢な投資家は、投資の成功を自身の腕とし、損失を恥と考え、誤りに倍賭けする。

ダモダラン教授の分析は、大株主のバリュエーションにも及ぶ。
教授は、その時価総額に着目している。

「ソフトバンクの非連結の持分(上場株・未公開株)に着目すると、ソフトバンクGの時価総額は、これら持分の73%の価値しかない。
持分の多くは時価評価されている。」

同社にはキャッシュフローを生む連結子会社もあるから、これは不合理のように見える。
ダモダラン教授は、だからといって同株を買うのならいくつか検討すべき点があると注意を喚起する。

  • 大きな債務を抱えている。
  • 27%のディスカウントは運用者への不信を反映したものかもしれない。

したがって、ダモダラン教授のこの銘柄に対する推奨はこうなる:

ウィーワークが輝かしい投資選別の記録の中の1つの逸脱にすぎないと考えるなら、ソフトバンクGの株を大量に仕込むべきだ。
私自身は、ソフトバンクG株を保有する予定はない!
私は誇大なものを好まず、孫正義氏はそれに漬かっているように思える。


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