イールド・カーブ、消費者心理の読み方:ジェフリー・ガンドラック

債券王ことダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が、昨日のFOMC前にCNBCのインタビューを受けている。
ここでは、金融政策・景気に関する部分を紹介する。


私はFRBは利下げすべきでないと思うが、現実には利下げするだろう。
債券市場が完全な青信号を示し、そうするようにプレッシャーがかかっているからだ。

ガンドラック氏がCNBCで、昨日のFOMC前に結果を予想していた。
FOMCの結論は、ガンドラック氏や市場の予想どおり25 bpの利下げだった。
インフレはすでにFRBの物価目標近辺にあり、名目GDPは4%程度、データも市場も悪化していない。
こうした状況の中で保険的利下げをする理由はないとガンドラック氏は主張する。

ころころ変わるFRB

ガンドラック氏は、FRBの政策に一貫性が見られない点を厳しく批判している。
FRBはいったん立ち止まり、政策の枠組みを確立すべきと注文をつける。

「ジェローム・パウエルFRB議長は記者会見の度に6週間前と違うことを話している。
・・・問題なのは、誰も(前回議長が用いた)『サイクル中期の調整』という言葉の意味がわからないことだ。
・・・議長は本当に、10年間景気が拡大しイールド・カーブが長短逆転した後に経済がサイクル中期にあると信じているのか?
・・・あるいは、議長がサイクル中期と言ったのは、金融引き締めの中期という意味なのか。 ハッ!」

時間とともにコロコロと変わるロジックにいら立っているのだ。
これは決して軽い話ではない。
FRBの説明に一貫性がなければ、さまざまな市場期待へのアンカーを弱めることにつながりかねない。
そうなれば、インフレも金利も中央銀行のコントロールを離れてしまうかもしれない。

短期金利急騰で「QEライト」へ

実際、それに似た現象が今週初めの短期金融市場で起こっている。
ガンドラック氏は、短期金利急騰からQE再開を予想した理由を説明した。

レポ市場で十分な準備預金がないため、昨日オーバーナイト金利が急騰した。
FRBがレポのオペをする直前には一時10%に迫った。
だから、ここで起こりうることは私がQEライトと呼ぶ量的緩和を開始することだ。
システム中の超過準備を増やすために、FRBのバランスシートを貨幣の伸びに沿って増やすアイデアだ。

ガンドラック氏が予想する「QEライト」とは本格的なQEのことではない。
現在進んでいる見えない量的引き締めを中和する施策のことだ。
成長する経済では経済の拡大にともない貨幣需要が発生する。
米ドルは世界中で使われる通貨であるため、この貨幣需要はなおさら大きくなる。
この需要に応えるため、FRBは貨幣を発行する。
この時、FRBがバランスシートを一定に保ってしまうと貨幣を発行した分だけ準備預金が減ってしまう。
つまり、量的引き締めのような現象が起こり、これが市場の流動性に影響を及ぼす。
この弊害を中和するには、貨幣の発行量を増やした分だけバランスシートの拡大を許せばいい。
ガンドラック氏が言うQEライトとはこうしたアイデアの施策だ。


ガンドラック氏は、今回の短期金利急騰の深刻度を尋ねられると、こう答えている。

「短期金利が短時間でもFRBの制御を外れるのは問題だ。
特に、リーマン・ブラザーズの周辺で起こった先例を見ればなおさらだが、今それが起こる気配は全くない。
しかし、問題なのは、系に流動性を供給する十分な準備預金が存在しないことなんだ。
世界金融危機の前にFRBがやっていたのは私がQEライトと呼ぶものなんだ。」

本格的なQEに回帰するかどうかは別として、QEライトの説得力は高そうだ。

選挙前の景気後退入り確率高まる

経済データは少し改善したが、すべて、景気後退指標を勘案すると、2020年の選挙前に景気後退入りする確率は増えている。

ガンドラック氏は米景気について従前からの弱気見通しを継続した。
その上でいくつか景気後退と関係する指標について解説している。
最もポピュラーなのはなんといってもイールド・カーブの長短逆転だろう。

「過去起こってきたのは、イールド・カーブの長短逆転が景気後退のかなり前に起こるということだ。
・・・
景気後退が近づくと、カーブはスティープになるものなんだ。
FRBがついに後手に回っていることを理解し、利下げ幅を拡大せざるをえなくなるためだ。」

ガンドラック氏は、市場がすでに長短逆転を消化しスティープ化に向かうと言いたいのだ。
そのためには短期金利の低下と長期金利の上昇が起こるのだろう。

イールド・カーブのスティープ化が景気後退の合図

ガンドラック氏は先日のウェブキャストで長期金利底入れを予想していた。
利下げの中で長期金利は上昇するのか。

「FRBが利下げしても、長期金利が下がるとは限らない。
さらに、過去を見るとQEは実際には長期金利上昇と相関がある。
これはこの10年多くのアナリストにとって謎だった。・・・
私は、市場がQEを経済刺激策と見て、長期金利が上昇するのだと考えている。」

利下げによって将来の景気回復期待が高まり、長期金利が上昇するという見方だ。
これが正しいなら、今後FRBが利下げするにつれ、短期・長期の両側の要因でスティープ化が進むことになる。

ガンドラック氏は、長期金利底入れを予想する背景を話している。

「理由はともかく、長期金利が今年の底を打ったと言った理由は、主に8月に底を打ったように見えたからだ。
一種のパニック、一方的な動き、永遠に走り続ける貨物列車といった感覚だった。
2016年7月に10年債利回り132 bpで底を打った時に感じたのとまったく同じだった。」

最後は債券王の勘が決めてになったのかもしれない。

消費者心理は最後に打ち上がる

ガンドラック氏は、景気後退の指標として最も重視する指標として現在と将来に対する消費者心理を挙げている。

「景気後退の前に毎回起こる確度の高いパターンは、まず消費者が将来について悪く感じる。
・・・これはかなり前から始まった。・・・
そして起こるのが、消費者が将来について悲観的なまま、現在に対する姿勢も悪化していく。
これが始まったところだ。」

この指摘は多くの人のイメージと反するのではないか。
現在の米経済は消費支出が支えているという見方が大方だからだ。
しかし、ガンドラック氏はこれについても暗い解釈を用意していた。

消費支出に対する消費者の態度は、景気後退入りの直前にとても強くなることで悪名高い。


 - 海外経済, 国内経済, 投資 ,