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インフレ期待を解き放つシナリオ:ニーアル・ファーガソン
2021年9月6日

フーヴァー研究所のニーアル・ファーガソン氏は、インフレ昂進の可能性を否定せず、日本にとっても大きな脅威となりうるシナリオを語っている。


2020年の春の政策決定者の考え方は、状況が金融危機に似ているから対応しなければいけないという傾向にあった。
金融危機に対処するのと同じやり方で対応しなければならないと。

マネーの進化史』などの著書で有名なファーガソン氏がCNBCで、パンデミック後の経済政策に疑問を投げかけている。
歴史学者らしい率直な話し方が印象的だ。

ファーガソン氏は(特に米国における)金融危機とパンデミックの大きな差を指摘する。
家計や銀行のバランスシートである。
金融危機ではこれが大きく傷み、危機を脱した後も回復の足を引っ張ることになる。
一方、パンデミックではそうとは限らない。
特に米国では手厚い財政による救済策もあり、民間のバランスシートはさほど傷んでいない。
(むしろ、強まった経済主体も多い。)
これが米経済の「急激なV字回復」をもたらしたのだという。

しかし、急激な回復は良いことばかりではない。
ファーガソン氏は「公衆衛生上の災害が財政・金融と潜在的インフレの災害に転化しうる」と警告している。

インフレが一過性か、一過性とはどれほどの期間かについて熱い議論が続いている。
特にFRBが「物価目標のレジームを変えた。しばらくインフレが目標より高くなっても気にしない。」と言う場合、いつの時点で期待が根本的に変化するのか。
私の感覚では1970年代が再来することはないが、1960年代終わりが再来することはありうる。
マクチェスニー・マーティンFRB議長(当時)がインフレ期待の制御を失った時代だ。

最近の米国ではインフレの嵐が吹き荒れた1970年代から1980年代初めが注目されている。
これに対してファーガソン氏は、1960年終わりに注目すべきという。
この時代にインフレ期待へのアンカーが失われたからだ。
人々の心を押しとどめるものがなくなった結果、1970年代のインフレが起こった。
ファーガソン氏は、インフレ・リスクに関する限り、デルタ変異種がFRBの助けになったかもしれないと語っている。
過熱する経済・市場を冷やす効果があったためだ。

ファーガソン氏は一貫してインフレ昂進を可能性として語っている。
決して、それを予想しているわけではない。
歴史学者として冷めた目で見ているのだ。
そして、冷静に、とても不吉な可能性を語っている。

歴史は重要なことを語っている。
歴史上の大幅なインフレとはほぼ常に戦争とともに起こってきた。
最後にインフレ期待を解き放つのは、もしも私が『冷戦』と呼ぶ米中対立がエスカレートするなら、例えば台湾をめぐる『熱戦』になるかもしれない。


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