アリアンツ経済顧問 モハメド・エラリアン氏は、強弱入り混じった雇用統計を受けてFRBが現状のスタンスを継続すると予想。
いっそうインフレ懸念を深めている。
これは強弱混じった統計だ。
良い点があるとあまり良くない点がある。
エラリアン氏がBloombergで、2日発表の米雇用統計についてコメントした。
6月の雇用統計は
- 非農業部門就業者数: 前月比850千人増(市場予想710千人増)
- 失業率: 5.9%(前月比0.1%ポイント悪化、市場予想5.7%)
- 平均時給: 前月比0.3%増、前年同月比3.6%増
- 労働参加率: 61.6%(前月と同じ)
となった。
これが意味するのは、この統計を見てFRBは様子見のアプローチが適切と確認されたと考えるだろうことだ。
だからこそ、株式市場はこうした反応をしたのだろう。
2日の米市場は主要3指数が最高値を更新する展開となり、S&P 500終値は前日比+0.75%の4,352.34となった。
強弱が併存する内容により、FRBがすぐさまさらにタカ派寄りにスタンスを移す可能性が低くなったと解釈された。
FRBはこれまで足元のインフレを一過性のものと捉え、長く金融緩和を継続する姿勢を続けてきた。
先月のFOMCでは、基本的な考え方こそ変えないものの、テーパリングの検討を始める可能性に言及、利上げ時期の予想も前倒しされたことで、タカ派寄りへの変化と捉えられる局面があった。
今回の雇用統計は、そうした懸念に一息つかせるものとなったようだ。
エラリアン氏はこれまで、足元のインフレを一過性と決めつけることに疑問を呈してきた。
同氏はCNBCで現在も見方を変えていないと話している。
インフレを経験するのに十分に年を取っている人は、それが常に一過性から始まり、単発のように見えるが、後に単発でなくなることを知っている。
1970年代のインフレに戻るとは言わないが、システムが想定していない状況に戻るだろうと予想している。
つまり、みんなが言う2%より高い持続的インフレだ。
エラリアン氏によれば、インフレとは一過性に見えるところから始まり「次に連鎖が起こり、滝となり、インフレ期待に影響が及ぶ」のだという。
インフレの記憶のない世代はもちろん、記憶のあるはずの世代でも、長い間インフレを経験してこなかったがゆえに、多くの人がこの歴史を忘れていると危ぶむ。
1970年代は2桁インフレの時代だった。
今の金融市場を驚かせるのに2桁インフレは要らない。
たとえば、足元のインフレが収まった後、3%程度のインフレが居座れば、FRBは金融引き締めを検討せざるを得なくなる。
ここでいう引き締めとは金融政策の正常化ではなく、イールドカーブを中立金利より高めに誘導することだ。
市場参加者の多くは、こうしたシナリオをまだ真剣に考えていない。
エラリアン氏は、FRBが現在のスタンスに固執する理由を3つ挙げている。
- 早すぎる引き締めが市場・経済を混乱させる懸念。
「より大きなリスクは出遅れることだ。」 - インフレがなかったこれまでは、経済を熱することは良いことだった。
- 良くないことが起こった時に、誰がとがめられるか。
FRBには確証バイアスと呼ばれる行動の兆候が見られる。
現状がいつまでも繰り返すと考えているが、現実の証拠は、もっと開かれた心を持つべきと示唆している。
確証バイアスとは、自身の主張を検証する時、主張を支持する情報ばかりを収集し、反証となるはずの情報を無視または集めようとしない傾向のこと。
結果を決めて後に理屈を作ろうとするタイプの意思決定者にありがちな認知バイアスだ。