海外経済

インフレ回避の不都合な現実:ローレンス・サマーズ
2021年3月9日

ローレンス・サマーズ元財務長官(現ハーバード大学教授)は、インフレ昂進を回避するための要件を語る中で、1つ重要なフレーズを挿し込んでいる。


もしもFRBがインフレについて真剣に考え、つぶさに監視し、そして痛みを与える用意をするなら、インフレを制御することができるだろう。
しかし、もしもFRBが、信認を受けている、インフレ期待はアンカーされている、インフレは心配すべきものじゃない、と言うようなら、皮肉なことに、インフレの制御に楽観的であればあるほど、インフレを制御できない確率が高まるだろう。

サマーズ氏がBloombergで、FRBがインフレについて1960-70年代の過ちを繰り返さないために必要なことを尋ねられて答えた。
事の性格上、同氏の答はかなり抽象的なものだった。
そこで1つ重要な点は、サマーズ氏が「痛みを与える」のを不可避と考えていることだろう。
これまで金融市場が実体経済より多く金融緩和の恩恵を受けてきたのだろうから、痛みがどこに大きく走るかは想像に難くない。

かつて財務長官やハーバード大学の学長まで務めた人物が優れているのは経済学の見識や明晰な頭脳だけではない。
空気を読むことや政治的な駆け引きまで知り尽くしている点が、掃いて捨てるほどいるハト派の学者と異なるところだ。

昨年10月には、賛成するわけではないものの、経済政策のパラダイムがシフトしたと指摘した。
金融政策一辺倒のパラダイムから財政政策にも重きを置くパラダイムへと変化し、それにともなう大きなリスクを抱えるようになったと、淡々と現状を描写した。
年末には、バイデン政権下での初の財政出動について、規模が過大で設計がお粗末と注文を付けている。
規模が過大というのは、経済過熱・インフレ昂進のリスクを心配してのことだ。
今年2月には、FRBがコンセンサスよりかなり早い2022年中に利上げを余儀なくされる可能性があるとコメントしている。

サマーズ氏は、インフレで苦労した記憶を持つ世代らしい話をする。

すべての大きなインフレは、中央銀行が(発生しているインフレの要因を)一過性の要因だと軽視することから起こってきた。
いつか一過性の要因が毎月発生するようになり、それが全体にとっての恒久的な要因になる。
インフレを引き起こさないためには、インフレを大いに心配することが必要なんだ。

サマーズ氏はインフレ発生の性格を「典型的な自己否定型の予言」と指摘する。
心配すれば起こりにくくなり、心配を怠れば起こりやすくなるという。

サマーズ氏が、現在話し合われている財政出動に否定的なのは、中身とタイミングに疑問があるためだ。
今はまだパンデミックで消費が活発になるタイミングではないのだから、一律給付金ではなくパンデミック対策にお金を多く配分すべきというわけだ。
また、実のあるインフラ支出も雇用や生産性の観点から重要との持論だ。
サマーズ氏は、与党民主党の危うさを見透かすような注文を付けている。

民主党はインフラにはるかに多くのお金を必要としている。
共和党が正しいのは、効果的な規制にすること、環境面の承認を迅速にすべきこと、調達を効率化すること。
私たちはそのいずれかではなく、両方の政治をやるべきだ。


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