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インフレ主義がともなう厄介なISM:マーク・ファーバー
2021年3月3日

スイス人著名投資家マーク・ファーバー氏が、インフレと国際・国内政治の関係を遠慮することなく語っている。


私の友人の何人かは・・・米中戦争が不可避と確信している。
2年ほど前まで、そうした結末はほとんど起こりえないと考えていた。
しかし、最近の出来事で私は、世界最大の経済(米・中・露・印とその同盟国)間の対立の可能性が高まっているとの心配を募らせている。

ファーバー氏が月次の書簡で、国家間の対立の深刻化を心配している。
何が同氏を心配にさせているのか。
国際政治における「最近の出来事」だけではない。
むしろ経済の要因が強く効いているようだ。
ファーバー氏はある友人の言を紹介し、それに同意する。

「『インフレは常に戦争とともに起こる。
ハイパーインフレは、しばしば戦争の始まりまたは終わりに、原因または結果またはその両方として起こる。
これまですでに明らかなのは、オリガルヒが利益を得る限り、米国で無期限に貨幣増発が続くことだ。』」

ここで「オリガルヒ」と指されているのは(旧ソ連の新興財閥というより)米国をはじめとする世界中の政商だ。
因果関係をともかくとして、インフレと戦争が同時に起こりやすいという指摘には一考の価値があるかもしれない。
真実か否かは定かではないが、想像を掻き立てるアイデアであるのは事実だ。

ファーバー氏は、オーストリア学派の重鎮ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスの「しかし、インフレ主義は孤立した現象ではない。」との言葉を引きつつ、リフレへの強い嫌悪感をあからさまにしている。

インフレ主義とは現代の政治経済的・社会哲学的アイデアのフレームワーク全体の1断片にすぎない。
金本位制提唱者の健全な貨幣政策がリベラリズム・自由貿易・資本主義・平和をともなうのと同様に、インフレ主義は帝国主義・軍国主義・保護主義・社会主義の重要な題目だ。

この対比はあまりにも(経済的)リベラリズムを贔屓しすぎているように響く。
ただし、前者が中庸を求め、後者が極端主義(右派・左派のポピュリスト)を指すのなら、わからなくもない。
何事も安易に極端に走るべきでないと言われれば、そのとおりだろう。

では、過去数十年、曲がりなりにもバランスが保たれていたのは何のおかげだったのか。
ファーバー氏は、戦争をする「余裕」がなくなることだったと指摘する。
ところが、その歯止めが効きにくくなっている。

しかし、米国のように世界の準備通貨を保有する国が今日、貨幣を増発することで目先の費用を支払うことなく対立に注力できるのなら、軍事対立の可能性は高まる。

戦前の高橋是清による善意の経済政策が、後に軍拡に利用されたことは日本人もよく知っている。
そして、戦後まもなく通貨に何が起こったかもだ。

準備通貨ならば、財政やインフレという制約をより長く棚上げしておくことができる。
自国通貨や自国通貨建ての国債に需要が存在するからだ。
将来のインフレ・リスクに目をつぶり財務を発行し貨幣を増発することで、「余裕」が保たれてしまっている。
これが、戦争を可能にしてしまうとの見立てだ。
ファーバー氏は、ある政治家/作家の言葉を引き、戦争に責任のある人たちがコストを負担すれば戦争は終わると皮肉っている。
そして、最後に、それまでの挑発的な内容とはうらはらに、バランス感覚のある投資スタンスを語っている。

私は、全体の資産配分を近い将来の大きな戦争に賭けるように構成するつもりはない。
でも、私の脳裏にこの可能性を焼き付けている。
戦争があろうとなかろうと、原油を含むコモディティ価格はさらに上昇すると信じている。


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