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インフレは供給だけでなく需要も大きい:ジェレミー・シーゲル

最近のインフレ昂進と株価上昇を的中させてきたジェレミー・シーゲル教授が引っ張りだこだ。
その教授が今一番声を大きくしているのが、足元のインフレの真因だ。


市場はもっと悪いことを恐れていたんだと思う。
毎月、実績の数字が市場予想より少しずつ高かった。

シーゲル教授がCNN Businessで、10日発表の12月の米CPIに対する市場の反応を解説した。
教授は、さらに悪化の可能性もあると話している。
結果、今年FRBが現状の市場予想よりさらに金融引き締めを積極化すると予想している。

12月の米CPI総合は前年同月比7.0%上昇と1982年6月以来の高さとなった。
いうまでもなく1982年とはボルカー・ショック冷めやらぬ頃だ。

シーゲル教授の同番組での発言内容:

  • FRBはこれまで大きく出遅れ。
  • FF金利は年末までに2%に引き上げられ、信用創造とインフレが鈍化。
    そうしないと今年もインフレは7%に。
  • 2020年のマネーサプライの伸びは史上最大で、2021年もトレンドを超える拡大だった。
    これが需要を増大させた。
  • オミクロンが収束すれば、さらに需要が増える可能性も。
  • 市場は金融引き締めで少し動揺するだろうが、インフレでは株式が有利。
    金利上昇はあるが、今年のS&P 500は0-10%の上の方を予想。
  • 株式配当はインフレと連動する傾向があり、一種のインフレ・ヘッジに。
    グロースからバリューへのローテーションが起こる。
    超グロースは不利。

シーゲル教授は、足元の米インフレが供給制約によるところが多いとする議論に注文をつける。

これは単なるサプライチェーンの課題ではない。・・・
あまりにも多くのお金があまりにも少ない財を追いかけているんだ。

CNBC番組では、12月CPIについてもう少し具体的にコメントしている。
12月はエネルギー価格下落があったが1月は上昇していること、サービス分野でも値上げが多いことを指摘した。

キャスターから、それでもいつか物価上昇は止まるはずと反論され、真っ向から反対意見を述べている。
足元のインフレがマネーサプライ増大による需要側にも原因があるというものだ。

「物価は下落しない。
問題は上昇が止まるのかどうかだ。」

シーゲル教授は、別のCNBC番組でもインフレ継続を予想した。
FRBの利上げ積極化で市場が動揺することはあっても、基本的にはTINAトレードが続くというものだ。

理解しなければいけないのは、株式が実物資本の求償権としての実物資産であることだ。・・・
インフレ環境で何に投資するか?
ドルもダメ、現金もダメ、債券もダメ。
株式は実物資産への求償権だ。

12年を超える強気相場、特にパンデミック以降について、誰よりも当ててきたシーゲル教授。
教授の読みの中で今最もコンセンサス外となっているのが、インフレの原因だ。
FRBを始め多くの人が足元のインフレの主因を供給制約と主張している。
この見方は、じきに自然にインフレが収まるとの見方につながる。
パンデミックが収束し、供給能力が増強されれば、供給制約の多くは解消すると期待されるからだ。

一方で、需要側の要因が軽視されすぎているとの見方もある。
すでに供給能力は全体としてはパンデミック前より増強されているとし、短中期的な供給制約の解消だけでインフレが十分収まるか疑問視する人たちだ。
米国についていえば、供給制約が収束すればCPIは2.5%以下まで下がってくるのか。
2.5%超ならば、FRBの2%物価目標が果たされていないとして批判を浴びることになろう。
もちろん賃金が物価上昇率を十分に上回るなら労働者は満足するだろうが、職場復帰を控えている人・引退世代は(特に低金利下では)怨嗟の声を上げるだろう。

シーゲル教授は、インフレへの需要側の寄与が大きいと考えている。
さらに、需要側要因をもたらしたのが財政・金融政策によるマネーサプライ増大だと考えている。
教授の読みが正しいなら、インフレを収束させる最も素直な道は金融引き締めとなる。
コンセンサスから見れば、2%のFF金利は高く見えるが、経済を冷やすという視点から言えば、名目2%(実質マイナス)はまだまだ低い。

仮にシーゲル教授の読みが正しくないなら、私たちはもう少し深刻なテーマを抱えることになるかもしれない。
いくつか重要な問いを自問することになろう。

  • 米国の日本化:
    これまでお金があれば支出してきたアメリカ人が、日本人のように貯め込むようになっているのではないか。
  • 政策の有効性:
    金融政策だけでなく財政政策についても、インフレ誘導の効果は限られているのではないか。
    もしもそうなら、それでも副作用のある無駄撃ちを続けるのか。

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