政治

インフレとは歯磨き粉のようなもの:マーク・ファーバー
2020年1月4日

スイス人著名投資家マーク・ファーバー氏が、ハト派FRB高官と格差問題について皮肉り、インフレのリスクを警告している。


金持ちを悪者にすることがとても多くの選挙民の共感を得る理由は単に『羨望』のためでははなく、普通の人々の公平感・正義感のためでもある。
過去30年、普通の人々が経済的に苦戦し出遅れている間、金持ちがどれほど財産を増やしたかを聞く時、人々は不信感から首を振る。

ファーバー氏が月例書簡で、格差問題について触れている。
格差問題を現実以上に大げさに取り立て、金持ちを悪者扱いする政治家がいる。
中身を見る前から、富裕層は全部悪といった極端なメッセージが流される。
それが票を稼ぐ近道と考えるポピュリスト政治家が世界中に表れつつある。
もちろん、それを肯定する理屈はない。

その一方で、格差はもちろん重大な社会問題だ。
だから、格差を問題視することは当然であろう。
そして、こうした問題意識に対して、少々ピントのずれたコメントまで語られるようになる。

ファーバー氏は、最近のニール・カシュカリ ミネアポリス連銀総裁の発言を紹介する。

「だから、ニール・カシュカリ ミネアポリス連銀総裁が
『金融政策は、かつて選挙で選ばれた公職者の領分と考えられていた再分配のような役割を果たすことができる』
と主張したのはとても皮肉なことだった。」

今年2020年は、カシュカリ総裁がFOMCで投票権を持つ。
同総裁はFRB内でも徹底したハト派として知られる。
非常に機転の利く人物らしく、航空宇宙分野のエンジニアとして職業人生を始め、ゴールドマン・サックス、財務次官補、PIMCO、カリフォルニア州知事選出馬(落選)等を経て2016年からミネアポリス連銀総裁を務める。
財務省時代、リーマン危機後の金融システム混乱の収拾で手腕を発揮し頭角を現した。
共和党員。

カシュカリ総裁は、格差問題への対策としての再分配にどのように役立てるというのだろう。
ファーバー氏は嗤っているのだ。
同氏は、FRBが政治家と同様に再配分に関与することはできると言う。
しかし、意味が少し違うと嗤っている。

「(『役割を果たすことができる』というのは)正しいが、蘭ラボバンクのマイケル・エブリーが主張するように、
『FRBは富を再配分することはできる。
しかし、その再配分とは貧困層・中間層から富裕層への再配分であって、逆の再配分ではなかった。』」

ファーバー氏は、他の多くの識者と同じように、金融緩和が格差を拡大すると考えている。
金融緩和は消費者物価とは比べ物にならないスピードで資産価格にインフレを引き起こす。
結果、資産を持つ者がますます富む構図となる。

もちろんその時、中間層・貧困層も引き上げられるのだから、金融緩和に意味がないとは言えない。
そこだけを切り取れば、大きな手柄だ。
しかし、それと同時に、格差は拡大している。
これを是とするか否とするかは議論が分かれるところだろう。

金融緩和が格差を縮小するメカニズムも存在することは存在する。
それは、前2回のサイクルのように、金融緩和がバブル発生を助長し、ついにはバブルが崩壊するシナリオだ。
そうなれば、持てる者が多くを失うことになる。
しかし、もちろんこんなシナリオを望むべきではない。
同時に、中間層・貧困層に致命的な打撃が及びかねないからだ。

ファーバー氏は、いつか分岐点が訪れると予想する。

ほとんどの投資家の予想とは逆に、私は、食品や消費者物価の上昇が将来のどこかで起こり、金融資産市場のストレスを生みうると信じている。
それとともに、金利は押し上げられ、債券価格は押し下げられるだろう。

至極当たり前の予想にすぎない。
しかし、最近こうした当たり前の予想がしにくくなった。
従来考えられていたよりはるかに長い時間にわたって、中央銀行が金利上昇を抑え込めることが実証されつつあるからだ。
その背景にはインフレが上昇しにくいという現状がある。
果たして、インフレが再び不愉快なほどに上昇する時がやってくるのだろうか。
その時と、高い資産価格が持続不可能になる時ではどちらが先にやってくるのだろうか。

ファーバー氏は《いつ》についてはもちろん明言していない。
ただ、カール・オットー・ペール元ドイツ連銀総裁の言葉を紹介している。
いかにもドイツ語圏の人物らしい言葉だ。

『インフレとは歯磨き粉のようなもの。
一たび(チューブから)外に出れば、元に戻すのはほとんど不可能だ。』


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