加藤出氏:インフレというボタンの掛け違い

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東短リサーチの加藤出氏が、リフレによる経済回復策に警鐘をならしている。
中央銀行は市場のインフレ期待を十分にはアンカーできないし、その過程でレバレッジが増大すれば経済のリスクが高まってしまうという。


「中銀が2%と言えば人々のインフレ予想がそこに収斂する、という効果は現実には限られるといえる。」

加藤氏は週刊ダイヤモンドへの寄稿の中でこう書いている。
インフレ目標の成功例とされるニュージーランドでの研究でもインフレ目標がインフレ予想をアンカーしていないとされ、アラン・ブラインダー元FRB副議長から支持されていると紹介されている。
企業経営者のインフレ予想は、中央銀行が与えるインフレ目標ではなく、経営者個人の買物経験に基づく影響が強いのだという。

米PCEコアコア物価上昇率(青)と10年ブレークイーブン・インフレ率(赤)
PCEコアコア物価上昇率(青)と10年ブレークイーブン・インフレ率(赤)

世界で物価が伸び悩んでいる。
米FRBがバランスシート縮小・利上げをもくろみ、欧ECBがテーパリングをうかがう中、物価上昇率は2%目標に達しない。
それでも日本よりはましと言えるのかもしれないが、ディスインフレが居座る様は似通っている。
日銀は、日本の物価が適合的期待形成によって伸び悩んでいると分析したが、程度の差こそあれ海外も同様なのではないかと思わせる。
企業経営者のインフレ予想が個人の買物経験から影響を受けるのであれば、それはまさに適合的(バックワード・ルッキング)だ。

いつの間にか、物価を引き上げることが中央銀行の責務とされてしまった。
物価が上がらないから金融緩和が長く続いている。
それが、先進各国の住宅市場で「日本のバブル期に匹敵する危うい過熱」をもたらしている。


「日本はそれらの国々よりも大胆な金融緩和策を実施しているが、人口減少のために住宅バブルは局地的だ。」

加藤氏はこう書くが、これも完全には安心できない。
金融緩和が終わればどうなるのか。
人口減少の見通しには変化がなく、そもそも日本の住宅は下落すべき市場だったのかもしれない。
悪い面ばかりに目をやれば、住宅価格が上昇しなかったからといってバブルでないとは言い切れない。
こうした思いが、再び企業・家計のマインドを冷やす。
ちなみに加藤氏は日本について、住宅市場より国債市場がバブルだとして懸念を深めている。

商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。お買い物される際には、必ず商品ページの情報を確認いただきますようお願いいたします。また商品ページが削除された場合は、「最新の情報が表示できませんでした」と表示されます。 では、こうしたバブル生産のメカニズムを逆回転させるには何が必要なのか。
加藤氏はBISの元チーフ・エコノミスト ウィリアム・ホワイト氏の主張を紹介している。

「物価の安定が実現すれば全てうまくいく、という中銀の今日の信念には根本的誤りがある。
物価安定が金融や信用、債務の拡張によってのみ達成されるのなら、最終的な結果はシステミックな危機を増大させる。」

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