ウォーレン・バフェット氏のインフレについての発言をもう1つ紹介しよう。
米国でインフレが吹き荒れ、ボルカー・ショックなしに収束できなかった頃、1982年2月付株主宛書簡だ。
「論理的に言って、過去・将来見込みのROEが高い企業は利益のほとんどまたはすべてを内部留保し、強化された資本からの余剰リターンを株主が得られるようにすべきだ。
逆に、低ROEなら、資本をもっと魅力的な分野に振り分けられるよう、とても高い配当性向が示唆される。」
41年前のバフェット氏の書簡には、最近の東証の提言のようなことが断言されている。
バフェット氏は、資本市場が実体経済を支えるメカニズムの一端を説明しているのだ。
さらに、ここではインフレとの関係が論じられており、それがまたユニークだ。
インフレがこのメカニズムを「アリスのワンダーランド」に陥れるというのだ。
価格が継続的に上昇すると『悪い』企業は1円でも多く内部留保しなければいけなくなる。
その企業が株主資本の預け先として魅力的だからではない。
あまりにも魅力がなく、低収益企業が内部留保を高める方針を取らざるをえないためだ。
低収益企業は、本来資本を株主に還元すべきかもしれないのに、生き残るために逆に還元を減らさざるをえないとの考えだ。
そして、1980年代初めの当時の高インフレがそれを助長したというのだ。
米インフレは収束したか?
つい最近まで世界はインフレを救世主のように称えてきた。
しかし、世界がデフレに苦しむ前まで、人々の思いは真逆だった。
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