海外経済 政治

イラン攻撃:ヌリエル・ルービニ教授の予言がまた当たる?
2020年1月5日

米国によるイラン司令官の殺害は何を意味するのか、「終末博士」ヌリエル・ルービニ教授が2018年10月に予想していたシナリオを見直しておこう。


「9つ目、トランプは最近の成長率が4%である時からFRBを攻撃していた。
成長率が1%を下回り失業が発生する可能性の高い2020年の選挙をどう戦うかだけを考える。
外交危機をでっちあげる『尻尾が犬を振り回す』ことに対するトランプへの誘惑は高まる。
今年(2018年)、民主党が下院で多数を維持すればなおさらだ。」

ルービニ教授が1年以上前に予想した2020年の景気後退シナリオ10ステップではこう書かれていた。
10ステップのうち9番目のステップで『尻尾が犬を振り回す』戦略が採られると予想されていた。

『尻尾が犬を振り回す』(wag the dog)というのは映画のタイトルだ。
弊サイトでも数年前から度々強く奨めてきた映画で、ロバート・デニーロ、ダスティン・ホフマン、アン・ヘッチなど超豪華キャストを配した心を揺さぶられる作品だ。
腐敗した政治、行きすぎたマーケティングの罪をコミカルに描いている。
1997年の作品だが、トランプ政権の誕生を予言するかのような内容だ。
何度でも繰り返すが、一見の価値のある映画である。
amazonリンク

さて、ルービニ教授の9つ目の予想の具体的な中身はこうだ。
「尻尾」が選挙、「犬」が外交・戦争である。

トランプはすでに中国に貿易戦争を仕掛けており、核武装している北朝鮮への攻撃はできそうにないから、彼の最後で最善のターゲットはイランになる。
同国との軍事対立を煽ることで1973、1979、1990年と似た、スタグフレーション的な地政学的ショックの引き金を引く。
言うまでもなく、来る世界経済の後退をさらに厳しいものにする。

実際、今回の米国によるイラン司令官殺害は多くの人たちにとって驚きであったはずだ。
イラクでイランの司令官を殺害することは宣戦布告なき戦争行為であり、イラクの主権を侵害するものだ。
イラン核合意という国際的合意から勝手に離脱したのは米国であり、どこから見ても理屈に合わない。
まさに、米国の傲慢さを表すようなやり方だった。

宣戦布告なくドローンで《テロリスト》を殺害するという言い訳は、議会承認を回避する常套手段だ。
他国の高官であっても、米政権(政府ではない)が認定すれば、裁判もなく《テロリスト》とされ、殺害が正当化されると考えているのだ。
最近では、人気ドラマシリーズのサブ・シリーズとして、FBI捜査官が外国で捜査を行うようなものまでできている。
諸外国に出かけていって、相手国の主権を侵害しまくる内容だ。
(もちろん日本にもやってきて、やりたい放題していった。
その組織的やり口は映画『ブラック・レイン』の比ではない。)
米国には、政府であろうが民間であろうが、たとえ相手が同盟国であろうと他国の主権を尊重するつもりはないようなのだ。

さて、ルービニ教授は、イラン攻撃をステップの9つ目に挙げた。
では、10番目は何か。

「最後に、上記の(10の)パーフェクト・ストームが起これば、それに対処する政策手段はまったく存在しない。
財政刺激策の余地は、莫大な公的債務によりすでに限られている。
非伝統的金融政策の可能性は、膨張したバランスシートや政策金利引き下げ余地の欠如により限られている。
金融セクター救済は、蘇ったポピュリズム運動や破綻寸前の政府を抱える国々では許容されないだろう。」

金融・財政政策に多くの余地がないことはコンセンサスだろう。
あるいは、余地はあるが、もしも使えば副作用が大きすぎると考える人が多いのだろう。
それでも、対処しなければいけない時には対処することになるのだろう。
結果、1つの嵐を緩和することはできるかもしれないが、それが別の嵐を生むことになるかもしれない。

最後の「金融セクター救済」については、特に日米においては、まだそこに至るまで時間がありそうな印象もある。
とはいえ、ルービニ教授にはサブプライム/リーマン危機を予見した実績がある。
油断せず、金融システムへの用心をすべきなのだろうか。

10のステップを予言し終えた後、ルービニ教授がどう結論したか、再掲しておこう。

政府が自由落下を防ぐ政策ツールを有していた2008年とは異なり、次の景気後退に立ち向かう政策決定者は両手を縛られている。
一方で、全体の債務レベルは前回の危機よりも高い。
それがやってくれば、次の危機と景気後退は前回より過酷で長く続くものになるかもしれない。

まさに「終末博士」の面目躍如である。


-海外経済, 政治
-,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 その他利用規約をご覧ください。