投資

アルファを生み出せる時代は終わった:ビル・グロス
2019年3月7日

債券王ビル・グロス氏の引退日のインタビュー第3弾。
債券ファンドの冬の時期をとうとうと語っている。


投資のアルファを生み出せるような状況はまだ市場に存在する。
でも、過去のようなアルファを同じ方法で生み出せる可能性は以前よりだいぶ減っている。
・・・(アウトパフォーマンスは)確実に減った。

グロス氏がBloombergで、債券市場でアウトパフォームすることが難しくなったと明かしている。
その背景には、30年超に及ぶ債券の強気相場(=金利低下局面)が終わったことがある。
グロス氏は、金利低下が行き着いたことで、債券ファンドが享受してきた「構造的アルファ」が消失したと説明した。

「過去30年の米10年債では、インフォメーション・レシオやシャープ・レシオなどで見るアルファは強気相場の中で単に保有しているだけで30-40 bpもあったんだ。
イールド・カーブ上で(残存)9年までロール・ダウンさせ『構造的アルファ』を生み出せばよかった。」

債券投資の果実にはインカム・ゲインとキャピタル・ゲインがある。
さらに、キャピタル・ゲインを2つの要因に分けるとグロス氏の言いたいことがよくわかる。

  • インカム・ゲイン: クーポンの受け取り
    ある銘柄(固定金利)に投資すれば、償還まで一定。
    ただし、金利低下局面だと、再投資する際の利率が低下してしまう。
  • キャピタル・ゲイン: 債券価格の変動差損益で、この変動を2つに分解する。
    • 金利の低下: 債券価格を上昇させる。
      さらなる金利低下余地は大きくなく、逆に上昇が懸念されている。
    • ロール・ダウン: 通常の右肩上がりのイールド・カーブでは、たとえば10年の金利は9年の金利より高い。
      だから、10年債を買って1年たつと割引率が低下し、債券価格が上昇する。
      現在イールド・カーブはフラットになっており、これが起こらない。

かつて債券ファンドの《トータル・リターン》を支えたコンポーネントが逆風にさらされている。
債券ファンドにとって何もいいことがないようにさえ思えてくる。
まさに冬の時代だ。

グロス氏がPIMCO時代に運用していたのはトータル・リターン・ファンドだった。
債券のトータル・リターンの中で十分なリターンを稼げたからだ。
しかし、金利低下が行き着くと、それがままならなくなる。
そこで、ジャナスではアンコンストレインド・ファンドを運用するようになった。
すべては自然な流れだった。
ただ1つ予想外だったのは、運用成績が振るわなかったことだ。

グロス氏は、PIMCOでのもう1つの成功要因を語った。
人が見向きもしない時代から、新たな金融商品に取り組む積極性である。
顧客を教育し、自社組織を叱咤激励することで、先駆者となったのだ。
グロス氏は、巨額の米国債先物を買っていた1980年代に顧客から言われた一言を回想した。

「それって大豆(先物)みたいなもの?
とうもろこしでも売買しているの?」

当時、米国債先物を扱う投資家は多くなく、キャッシュとのスプレッドは大きく「無リスクに近い裁定」が取れたのだという。
しかし、こうしたチャンスもずいぶんと少なくなった。

現商品・デリバティブ商品のいずれのメニューの観点からしても、市場は高度に開拓された。
やれることはやりきってしまったんだ。


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