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アベノミクスがもたらした景気回復の正体:野口悠紀雄氏
2019年3月15日

早稲田大学ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄氏が、アベノミクスによる経済回復について検証している。
それによると、日本経済は「景気回復」からはほど遠い状況にあるのだという。


この数年間で企業の利益が顕著に増え、株価が上がった。これがアベノミクスの成果であるとされる。
企業の利益は、史上最高水準といわれることもある。
だが、これは上場企業のことである。

野口氏がダイアモンド・オンラインに書いている。
大企業、とりわけ円安の恩恵を受けやすい製造業の大企業はアベノミクスの間おおいに潤った。
一方で、零細企業、とりわけサービス業の零細企業では賃金も利益も減少していると指摘している。
従業員数でみれば、零細企業は大企業より1割も多い大きなセグメントだ。
その零細企業で売り上げが1.7%しか伸びていない点を野口氏は問題視する(大企業は12.2%増)。
いうまでもなく、物価上昇に満たない増加である。
売上からして物価上昇に追いつかないのでは、零細企業で実質賃金が上がるはずもない。
それでも利益が増加しているのは、賃下げと人減らしの効果という。
このセグメントの人たちからすれば、何のための経済成長という話になろう。

零細非製造業の従業員は約671万人だ。
これは製造大企業291万人の2倍近い。
この部門では、賃金が下がり、利益が減少している。
これこそが、現在の日本企業の標準的な姿なのだ。

景気がよくなっているのにその実感がない。
それも当たり前のことなのだろう。
景気がよくなっているのは一部の人たちだけで、大多数の人が向き合っている経済は改善したとは言い難いのだ。
GDPという全体のパイは大きくなったのかもしれないが、その分配はかなり歪んだものになっている。
異次元緩和が円安を維持し続けることで、この状態もまた固定化している。
一部の人たちに恩恵を与える政策が(恩恵をローテーションすることなく)固定化されているのだ。

野口氏は日本の経済史を振り返る。

かつて日本の経済は、近代的大規模企業と前近代的中小零細企業が併存する二重構造であると言われた。
その後の高度経済成長によって、賃金や生産性の格差は解消されたと考えられていたのだが、現代の日本では、以上で見たような二重構造が復活したと考えることができる。

輸出産業に重く恩恵を与える政策が固定化している。
結果を見る限り、トリクルダウンも十分には起こっていない。
割を食うのは消費者であり輸入産業だ。
この部門には家計や中小企業など非力な経済主体が多い。

日本経済の二重構造が復活していることは、日本が格差を容認することなく経済を回復させることができないことを示唆しているのか。
もしもそうなら、一度真剣に経済成長をあきらめる選択肢も考えた方がいい。
真相は、おそらく第3の道が存在する、あるいはそう想定するということなのだろう。

野口氏は、日本の総就業者数6456万人から法人企業統計が対象とする3440万人を差し引いた約2700万人にも言及している。

これらの人々の多くは、ここで見た法人企業零細企業の場合よりもさらに劣悪な状況にあることが推察される。
日本経済の現状は、『景気回復』というにはほど遠い状況にあるのだ。


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