デービッド・アインホーン

 

アインホーン:損しているのに得したように見える

Greenlight CapitalのDavid Einhorn氏は、株価が企業の損益で決まる時代でなくなったと嘆いている。
損失が積み重なっているのに皆が儲かっているように見える構図に危機感を抱いている。


「株式のバリュエーションを見る限り、市場が株価算定の別のパラダイムを採用したのではないかと疑いたくなる。」

バリュー投資のヘッジ・ファンド・マネージャー、アインホーン氏が投資家あて書簡で困難な市場環境を綴っている。
モメンタム銘柄が市場を牽引し続ける状況で、バリューに基づくロング・ショート戦略が有効性を失っていると嘆いているのだ。
割安を買い割高を売るロング・ショートのポジションをとって裁定が閉じるのを待っても、むしろ裁定が開いていくのだ。

「仮に、株式の価値が現在または将来の利益とは関係ないとしたらどうなるだろう。
かわりに、現在・将来の経済的損失をもたらすとしても、企業が破壊的である、社会の変化をもたらす、あるいは有益な技術を推し進めるといった能力から株式の価値が導かれるとしたら。」

企業が革新的な製品・サービスを生み出し、社会に変革をもたらすのは喜ぶべきことだ。
しかし、それは株価形成の主たるストーリーではないはずだ。
ところが、現在の株式市場では、収益とは関係なくそうした企業に資金が向かうことがある。
超低金利とカネ余りが生んだ空前の投資難。
本来なら個別銘柄への投資などしなかったはずの人たちが、そうした市場に流れ込んでいる。
こうした投資家は馴染みのあるわかりやすい銘柄に殺到しやすい。


たくさんの企業が、株主からの補助金によって顧客に製品やサービスを提供しているのは明らかだ。
それでも、市場価格での評価では、株主は儲けていることになっている。

典型的なのはTeslaであろう。
テスラが開発コストを販売価格に転嫁するなら、テスラの販売価格は量販車としては現実的でない水準に戻ってしまう。
テスラは損失で悪化したキャッシュ・ポジションを増資で埋めるやり方を繰り返している。
つまり、株主は増資によってテスラに「補助金」を与え、それによってテスラは販売価格を抑えている。
電気自転車操業とでも言うべきやり方なのだが、不思議にも株価が上がる。
不思議なことに、市場価格での評価では、株主は儲かっていることになる。

アインホーン氏は依然としてテスラをショートしている。
テスラの行く末は、Model 3が思うような利ザヤ・販売量を実現できるかにかかっている。
そうでなければ、テスラはよりポンジ・スキームに近づく。
そうしたスキームはいつ崩れるのか。

「条件反射の本能は、うまくいった戦略がひどく人気を失って可能性に疑問が持たれた時に反応する。
そのサイクルはすぐに転換するはずだ。」

ところが、その転換が《いつ》はわからない。
市場は高いバリュエーションへの危機感を高めながら、同時にバブル膨張を容認しようとしている雰囲気がある。
この環境は、ショートを避けられないヘッジ・ファンドには厳しいものだろう。

「不幸なことに、はっきりとはわからない。
数年の間風に流された後となっては、『転換する時に転換する』としか言えない。」


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