リチャード・セイラー シカゴ大学教授が、パンデミック解消後の米国株市場についてユニークな視点で語っている。
株式市場の観点から面白いのは、社会活動が再開する時にみんながトレーディングに飽きてしまったら何が起こるのかということだ。
ほぼ昨年全体を通して株式市場を特徴づけるものがあるとすれば、多くの人が家に閉じ込められ何もすることがなく、雇用が維持され使うより多くを得た人たちがいて、その多くが株式市場に向かっていたということだ。
セイラー教授がBloombergで、株式市場を行動経済学的なアングルから語った。
パンデミックで多くの人が家にこもった切りとなり、一方で手厚い給付金等により所得が増えた人も多かった。
これが、株式市場の活況をもたらした一因だ。
現在の市場にバブルの兆候が見られるとする時、その1つとして挙げられるのが大量の個人投資家の株式市場への新規参加だ。
これがGameStop騒動に見られるように、市場に大きな影響を及ぼしているとの見方が増えている。
セイラー教授は、小口投資家の市場への影響力については不明としつつ、傾向の変化が起こっていたと指摘している。
「個々の証券に投資する個人投資家は市場ではゆっくりと減っていた。
そうした投資家の存在は1990年代終わりのバブルでは大きかった。
でも、その後生き返った人たちは自分たちが天才でないことを知り投資をプロに任せた方がいいと理解した。」
ドットコム・バブル崩壊等で痛手を負った個人投資家は、投資信託等に投資することで、プロに運用を委ねたのだ。
ところがコロナ・ショックでこの流れに変化が起きている。
投資家がパーフェクト・ストームに見舞われた。
一番好きな株、一番上がっている株を買うことで市場に参加した。
つまり、程度は違えど、1990年代のような個人投資家の市場参加が起こっている。
20年超を隔て、ドットコム・バブルの記憶のない投資家も多いだろう。
では、再び同じミスが繰り返されるのだろうか。
セイラー教授は、1990年代の教訓を尋ねられ、投資家に初期の実績への過信があったと振り返っている。
誰しも運よく連勝することはある。
今でいう運のよい連勝とは、再大手の企業がほぼ健全なファンダメンタルズを理由に最も早く上昇したことで、もちろんこれには例外もある。
これにともない市場も上昇した。
この間、みんな自分が天才だと思い込んだ。
セイラー教授は、こうした個人投資家を「愚かなマネー」とは呼びたくないという。
代わりに「無知なマネー」と呼びたいと話している。
教授は、コロナ後に起こりうる揺り返しについて、個々の銘柄の中身、パンデミック中の株価動向に注意すべきと暗示している。
株式市場全体の水準が苦しむと言うつもりはない。
一部の銘柄が苦しむのだろう。
みんなが株式市場への投資に関心を持ち始めた5、6月、彼らが一番よく知っている企業が一番上昇したが、それは当然のことだ。
Google、Apple、Facebook、Netflixはロックダウンで利益を増やしていた。