みんなそんなに心配していない:ロバート・シラー

資産価格の実証的研究で2013年ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が、資産市場が脆弱になっていると警告している。
危機から10年、人々の記憶も薄まり、やや油断が広まっているかもしれないと話している。


危機から10年が経ち、そうしたナラティブが忘れられ始めている。
全部、本に書いてあるよ。

シラー教授が新著『Narrative Economics』のPRでYahoo Financeに出演した。
教授によれば、住宅市場とはナラティブで突き動かされているのだという。
人々のナラティブにサブプライム/リーマン危機で大きな変化が起こり、さらにそれが忘れられようとしているという。

「2007年より前は、住宅を転売(すれば儲かる)というナラティブだった。
住宅価格は常に上昇すると考えられた。
グレート・リセッション後は、人々が家を失うという悲劇的なナラティブになった。
借りすぎ・貸しすぎは危険と考えられるようになった。」

危機時に悲劇を体験・目撃した人たちは、直後こそ、あつものに懲りてなますを吹くような慎重さだった。
ところが、景気拡大が長く続く中で、人々の記憶は薄くなっていく。
そこに、トランプ大統領というムード・メーカーが現れた。

「トランプはけばけばしい生活のモデルなんだ。
全員ではないが多くの人のムードをつかむ天才なんだ。
・・・みんな素敵な家がほしい。
米国は回復した。
もうそんなに心配していない。」


1923年から6年弱大統領を務めたカルビン・クーリッジとの類似点について尋ねられると、シラー教授は共通点と相違点を説明している。
教授は前回の大統領選直後、トランプ大統領とクーリッジを比較していた。

「彼は、初めて国中にビデオで話しかけた大統領だったと思う。・・・
彼は、本当にビジネスマン・タイプ、プロ・ビジネスだった点でトランプと似ている。
しかし、スピーチのスタイルはトランプと真逆だった。
想像しうる中でもっとも温和なスピーチのスタイルだったんだ。」

シラー教授は、人々を鼓舞するのにはではでしい必要はないと言い、クーリッジが狂騒の20年代を鼓舞したと述べている。
その1920年代終わりに米市場は崩壊し、恐慌が世界を襲うことになった。

「それは彼の責任なのか。
彼にも責任はあるように感じる。」

シラー教授は、それと同様のことが起こりうるのかと尋ねられ、否定しなかった。
ただし、1929年ほど劇的なことを想定しているのでもないようだ。

「株式市場は1929年と同程度、29年ほどではないが高水準にある。
これは、米市場が調整に対して脆弱になっていることを示している。
でも、差し迫っているとは見ていない。」

シラーのCAPEレシオの過去最高値は1999年7月の43.83とその前後。
次が2018年1月の33.31とその前後。
次が1929年9月の32.56とその前後。
足元(8月)は28.95だ。

シラー教授は「差し迫っているとは見ていない」とタイミングについてやや曖昧さを残す話し方をしている。
もしかすると、新著で唱えられている経済学は、タイミングについて従来の経済学より進んだ知見を与えてくれるものになるのかもしれない。
教授は、新著に込めた思いを語っている。

この本はさらなる研究を喚起するためのものだ。
でも研究の対象は人々であって単なる数字ではないんだ。


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