ウィリアム・ダドリー元ニューヨーク連備総裁は、今後の利上げサイクルが現在予想されているより大きなものになると予想している。
おそらくFRBは利上げを6月かもう少し後に始めることになろう。
そしてその後、みんなが思うより速く、高い金利(のピーク)まで利上げするだろう。
ダドリー氏がBloombergで、これから始まる金融政策正常化がFRBや市場の予想を超えるところまで進むと予想している。
同氏が予想するのは、正常化だけでなく引き締めまで踏み込む(あるいはそうせざるをえなくなる)シナリオのようだ。
「興味深いのは、みんな2004-06年に起こったことを完全に忘れてしまっている点だ。
この間、FRBは17回連続で引き締めている。
毎回FOMCで0.25%ずつ利上げし、FF金利は1%から5.25%まで上昇した。」
2004-06年のFRB利上げサイクル(FF金利、青)と都市部CPIコア(前年比、赤)
確かにFRBも市場もある種都合のよい前提に立っているようなところがある。
途中で正常化が頓挫した前回同様、今回も以前とは違うと思い込んでいるようなところがある。
9月のFOMCで公表されたFF金利予想(刈り込みレンジ)は2024年で0.9-2.1%、長期でも2.3-2.5%と低水準だ。
米国債のイールドカーブから計算される1年フォワード金利は、4年後以降、約2%でフラットになる。
曲がりなりにも経済は過熱が心配されている。
高インフレには一過性の部分もあろうが、趨勢的に上方にシフトした可能性もある。
そうした状況でも、政策金利が以前のような水準には戻らないとする前提が受け入れられ続けている。
ダドリー氏は、2004-06年のような長く大きな利上げが戻ってくるかもしれないという。
極端に感じられるかもしれないが、当時はインフレは問題ではなかったし、金融環境は今ほど緩和的でなかった。
これは、ありうるもう1つのシナリオだ。
金融市場が現在織り込んでいる1.75%を(政策金利の)ピークがはるかに超えて来ると強く予想している。
ダドリー氏が予想するFF金利のピークは3-4%だという。
もちろん イールドカーブはしばしば長短逆転を起こす傾向がある。
しかし、そうはいっても、逆転が長く持続するというのはなかなか考えにくい。
FF金利が3-4%なら、長期金利もそのくらい、あるいはそれより高い水準にいくのだろう。
問題は、現在の市場・経済がそれに耐えられるかだ。
米長期金利(青、左)、S&P 500(赤、右)、FF金利(緑、左)
前回の利上げサイクルでは長期金利が2.5%、3.0%と超えていく段階で大きな調整が入っている。
ダドリー氏のいうような利上げサイクルになるなら、こうした水準は超えていくことになろう。
その時FRBは再び逆回転し市場を支え続けるのだろうか。