海外経済

まだ債務拡大を心配すべき段階ではない:ケネス・ロゴフ
2020年5月22日

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、コロナ・ショックで悪化する米財政についてコメントし、米社会のある変化を予想した。


まだこの状態になって2か月しか経っておらず、おそらく(政府の財政状況は)はるかに悪化するだろう。
米国はアメリカ人と経済を助けなければいけない。・・・
今はそれ(債務拡大)を心配する時ではない。

ロゴフ教授がCNBCで、現時点での政策の優先順位を明言した。
教授は以前コロナ・ショックをエイリアンの侵略に喩えたことがある。
戦いに勝つことが大前提であり、そのために必要な資金を出し惜しんではいけないとの考えだ。

ロゴフ教授は元IMFチーフ・エコノミストで『国家は破綻する』の共著者としても有名。
この本は、国家債務が増えすぎると破綻リスクが高まる、という当たり前の命題を主張した本だ。
それでも、世の中に多く存在する、とにかく財政刺激策をおねだりし続ける人たちは、ロゴフ教授らを緊縮派であるかのように批判した。
しかし、現実は、ロゴフ教授はニューケインジアンであり、しかもある意味でケインズの考えを忠実に実行しようとしている。
つまり、必要な時には刺激策を、そうでない時は元に戻す、ということだ。
ロゴフ教授はこれを「雨の時のための貯蓄」と呼ぶ。
雨の時に困った人々や経済のためになるべく多くの資金を使えるようにするためには、晴れの時に貯金を殖やす必要がある。
さもないと、金融市場(やインフレ)が借金を許してくれなくなるかもしれない。

ロゴフ教授は、多くの国がコロナ・ショック対策による財政悪化で深刻な問題を抱えると予想する。
格付会社とソブリン格付についてさや当てが始まり、市場では財政悪化の中どう超低利回りの国債を消化させるかが課題になるという。
ただし、米国について、ロゴフ教授は、まだ借入余力があると見ている。

「ドルが世界の金融システムを支配しているため、米国は独特の立ち位置にある。・・・
現時点では米国は借金できる。・・・20年超でもだ。
長い年限で借りればいい。
そうすれば間違いなく借り換えリスクなどリスクの一部を減らすことができる。
これはフリー・ランチではないが、米国はランチを振舞うのをやめる準備はできていないだろう。」

借金は決してフリー・ランチではなく、長期的コストを増やすものだ。
しかし、今は必要なことに資金を使うことを躊躇すべきではない、というのがロゴフ教授の一貫した考えだ。
その一方で、財政資金は無限ではないから、使い道が重要とも釘を刺す。

「これは拙い政策の言い訳にはならない。
分別のある、将来経済を再編するような政策を求めるべきだ。」

ロゴフ教授は、コロナウィルスの脅威が去っていない今はまだ、債務拡大を心配する時期ではないと話す。
一方で、心配を始めるべきタイミングで投げかけられる疑問もまた自明だ。

先進国経済の国債の市場の約半分がドル建てで、米国はどの国よりも速く拡大させている。
歴史もモデルも示すのは、これが増えると脆弱になるということ。

債務が増えれば破綻や高インフレのリスクが増えるのは当然だ。
しかし、どの程度の話なのか、どこかに転換点が存在するのかは誰にもわからない。
今わかっているのは、ドル建て債務の起債が、特に低金利では、徐々に難しくなっていく可能性が高いことだ。

しかし、ロゴフ教授は、それよりも重大な問題が米社会には存在すると指摘する。

問題は債務というよりも、この先何が起こるか、どれだけ再編が必要か、格差に対処するためどれだけ長期的に変化するのかの論争の方だろう。
長期的にこれが終わる時には、裕福で高所得な人々の税金が上がると予想している。
すぐではないが、不可避だ。
コロナ・ショック前からそうだったのだろうが、かつてなく可能性が高まっている。


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