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まだまだFRBのタカ派転換が繰り返すワケ:ジェレミー・シーゲル
2021年12月19日

ウォートンの魔術師ジェレミー・シーゲル教授は、インフレを止めるための現実的な手段を示し、そのためにFRBは今後もタカ派寄りへの軌道修正を繰り返すと予想している。


結局のところ、FRBはまだ(引き締めに)十分に積極的ではない。・・・
まだ3か月も公開市場で買入れを行い、利上げは3月まで遅れる。

シーゲル教授がウォートン・ビジネス・ラジオで、ブレることなくFRBの遅いインフレ対応を批判している。
今月のFOMCでインフレを一過性と表現するのをやめ、タカ派寄りに軌道修正したFRBだったが、教授からすればまだまだ足りないという

「もちろん、それで起こるのは、私が起こると信じるのは、インフレを熱く熱し続けるということだ。
そのためFRBは軌道修正を繰り返し、どんどん積極的になっていくことになる。」

シーゲル教授は、9月と12月のドットプロットの変化を例に挙げる。
9月には2022年に利上げをしないとする人がFOMCメンバーの半数だった。
しかし、わずか3か月後の12月にはドットは大きく上方にシフトし、メジアンで3回の利上げを見込むようになっている。
教授によれば自身が目にした中で「最も急激なドットプロットの変化」だといい、これこそ出遅れの証拠だという。

MITで金融政策を専攻し、シカゴ大学でミルトン・フリードマンの下で働いたこともあるシーゲル教授は、目下のインフレに対する信念を繰り返した。

基本的な命題とは、米国がマネーサプライ、流動性をあまりにもあまりにも急激に増加させているというものだった。・・・
インフレを鈍化させる唯一の方法は、流動性の増加率を押し下げることであり、流動性の増加率を押し下げる唯一の方法は、人々がクレジット投資を躊躇するようになるまで利上げすることだ。

FRBが出遅れたとのシーゲル教授の以前からの見方はとりあえず正しかったのだろう。
(本当にどうかは終わってみなければわからないが、これまでのファクトは教授が正しかったと告げている。)
しかし、FRBもただ怠慢を続けていたわけではない。
今月のFOMCを迎える前に、実にうまくタカ派転換を市場に織り込ませてきたともいえる。
だからこそ、FOMC後に市場は荒れるどころかややポジティブな反応を見せたのだ。

つまり、現時点で市場とFRBの見通しの乖離はかなり縮小した可能性がある。
裏を返せば、シーゲル教授が予想するような軌道修正が今後も繰り返すなら、その前後に市場はリプライシングを迫られることになろう。

シーゲル教授は、FRBがマネーサプライを長らく重視していないと嘆く。
アラン・グリーンスパンやベン・バーナンキはマネタリストだった。
ジャネット・イエレンはニューケインジアンで、ジェローム・パウエルは法律家だ。
マネタリスト的な考えが特に重要になったのはバーナンキの頃だろうが、バーナンキは決してマネタリストらしいFRB議長ではなかった。
量的緩和こそ実行したが、マネタリーベースという見せ金を増やして見せたにすぎない。
(バーナンキはその理論的有効性は信じていなかった。)

シーゲル教授は(マネタリーベースより)マネーサプライが重要との教えをフリードマンから受けている。
番組でも、FRBが長らくマネーサプライを重視していないことへの不満を吐露している。
これは、言い方を変えると、現在主流とされるが、たびたび貨幣や銀行の勘案が過少と指摘されてきたニューケインジアンの経済モデルへの批判でもあろう。

実は今回の番組にはもう1人ゲストがいた。
2006-10年にFRB副議長を務めたドナルド・コーン氏だ。
シーゲル教授はコーン氏を相手に、FRBの議論のフレームワークについて疑問を投げかけている。
何かブレークスルーが見えるような議論ではないが、それでも経済オタクの人たちにはとても楽しく聞ける口喧嘩に仕上がっている。


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