ジェレミー・シーゲル教授が強い雇用統計を受けて、いっそう強気を強めている。
「これはとてもよい雇用統計だ。
平均時給は予想より低いし、失業率は下がらず3.8%で経済に少したるみを与えた。
人々は労働市場に戻りつつある。
これはまさに望んだことだ。」
シーゲル教授が6日のウォートン・ビジネス・ラジオで、9月の雇用統計についてコメントした。
9月の雇用統計は非農業部門雇用者数が336千人増と、市場予想の170千人増を大きく上回った。
これがFRBをよりタカ派にし、結果ハードランディングにつながるとの慎重な見方をする人も少なくなかった。
しかし、さすがは《永遠のブル》、常に物事の明るい面を見ている。
現在インフレは鎮静化傾向にあるのに経済が強いままである点を指して企業利益にプラスと話している。
FRBの金融政策については、不確実性の残る11月1日のFOMCは現状維持、強い経済に対応するにしても12月だろうという。
また、経済の強さを反映し、FRBは中立金利の推計を実質0.5%から1.5%に引き上げるだろうと予想した。
「金融政策は引き締め的だが、ほとんどの原因は強い経済だ。
しかし、労働参加がインフレを低下させ続けており、ラグのある住居費の力学は今後6か月公式のCPIデータの低下要因となる。」
インフレ鎮静化には(AIなども含む)生産性向上が効いているとも繰り返している。
シーゲル教授の主張は一貫している。
強い経済にともなう利上げや金利上昇なら株式市場は吸収できるというものだ。
第4四半期も強い経済が続く見込みで、企業利益も市場予想をクリアするだろうと見ているという。
市場は来年のS&P 500の利益に対しPERが16.5倍となっているが・・・テック株を除くとおそらく13-14倍だ。
景気後退があるかどうかは問題じゃない。
どうせマイルドな景気後退だ。
とてもお買い得、株式保有者にとって長期でとてもお買い得だ。
長い目で見て米経済・市場が右肩上がりを続けるとの前提に立つ以上、シーゲル教授の考えはいつも《長期で買い》となる。
景気後退・弱気相場が来るにしても、谷が浅いならそれをやり過ごす必要はないと考えているのだ。
興味深いのは、この番組の2日前の債券王ビル・グロス氏との違いだ。
グロス氏は、債券価格と株価の間に乖離が見られると指摘し、現状の金利水準と整合するPERを12倍と提示した。
乖離がある程度解消する、つまり、いずれか、あるいは両方が動くと予想している。
同氏のニュアンスは、株式の方が大きく動くように受け取れる。
実は、この2人はさほど大きく異なることを言っているわけではない。
シーゲル教授は「テックを除く」株価を用いているが、これは、いわば比較的低いPER群だ。
逆に言えば、比較的高いPER群が存在するということだ。
《高い部分を除けば高くない》という話は、その通りになるかもしれないが、今のところは少し眉に唾して聞いておくほうがよいかもしれない。