海外経済

ほぼすべてのアジア諸国は中国に従う:ケネス・ロゴフ

ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授が、ドルの主要準備通貨としての地位を過信すれば、将来深刻な問題に追い込まれると警告した。


多くの理由から、中国当局はいつか人民元を通貨バスケットにペッグするのをやめ、現代の物価目標体制に移行するだろう。
その体制では、為替レート、特に対ドルのレートはより自由に変動を容認されるはずだ。
それが起これば、ほぼすべてのアジア諸国は中国に従うだろう。
やがて、現在世界の約2/3の通貨をアンカーしている通貨であるドルは、その割合を半分近くまで落とすだろう。

ロゴフ教授がProject Syndicateで、米ドルの主要準備通貨としての地位が皆が思うほど盤石ではないと分析している。
もちろん、今日、明日すぐにひっくり返る話ではない。
長い時間をかけて交代を迫られるという話だ。
その引導を渡すのが、次の主要準備通貨と目される人民元の自由化だ。

「中国が通貨政策を柔軟化させるとの長年の主張の根拠は、仮に中国の資本規制がある程度の孤立を与えるにせよ、中国経済がFRBの奏でる曲にしたがってダンスさせるには大きすぎる点にある。
中国のGDP(購買力平価ベース)は2014年に米国を抜き、いまだに欧米より速く成長しており、為替レートの柔軟化がまずます避けられないとの見方を強めている。・・・
19世紀終わりに世界最大の貿易国として米国が英国を凌駕したのと同様、中国ははるか昔に同じ物差しで米国を抜いていた。」

中国経済は、そもそも自国通貨を他国通貨にペッグし続けられるほどマージナルな存在ではない。
為替換算の方法によるが、名目GDPは世界No.1かNo.2なのだから。
中国はとかく、立派な国・経済に成長しても、途上国なみのわがままを言い続けたがるが、それにも限界がある。
徐々に尻尾が犬を振り回すような性質が強まっていくのだろう。

ロゴフ教授は、主役交代を促す要因は他にもあると指摘する。

  • 米国のドルを通した支配への懸念。
  • グローバル化の巻き戻し。
  • 人民元規制の緩和とデジタル通貨での先行。

もちろん、人民元の側で交代の準備ができたからといって、すぐさま交代が実現するわけではない。
しかし、これまでドルとしていた取引・外貨準備の一部が人民元に移行していくのは自然なことだろう。
そうなれば、双子の赤字を抱え続けてきた米国には厳しい試練が訪れる。
準備通貨としての地位が下がるにしたがい、ドルが売られ、米国債が売られることになる。

ロゴフ教授は、米国の政治家や経済学者の多くが、外国人のドル債務への食欲を過大評価していると心配している。
とりわけコロナ対策のためにやむをえず債務を膨らました現在、準備通貨であり続けることの意義は大きい。
教授は、この先起こるかもしれないことを連想させるような先例を1つ挙げた。

今日のアジアのドルとの密接な関係と、1960年代・1970年代初めの欧州の状況とは驚くほどの類似点がある。
この時代は、高インフレとブレトンウッズ体制による固定為替相場の崩壊で幕を閉じた。
そして、欧州諸国のほとんどが、対米貿易より欧州内貿易の方がより重要であると認識した。
これがドイツ・マルクのブロック出現につながり、それが変化して統一通貨ユーロとなった。


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