アスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、コロナ・ショック下でも株価が急上昇した3銘柄について、いつものように辛口のコメントをしている。
ポイントは実現不可能な前提だ。
私はテスラ株を120ドルで売った。
どれだけ取り損ねたことか。
ダモダラン教授がCNBCで、パンデミック下で大きく上昇した3銘柄(テスラ、ズーム、ペロトン)についてコメントしている。
一番手は電気自動車メーカーのテスラだ。
教授は昨年半ばにテスラ株を買い、今年になって売却している。
売却価格は分割後に換算して約120ドル。
テスラ株は今や600ドルの水準だ。
結果論でいえば、急ぎすぎたということになろうが、ダモダラン教授は平然としている。
《バリュエーション学部長》の信念は、自分の信じる価値より十分に株価が高くなったら売るべしということにある。
ダモダラン教授はすでにテスラ株への関心を失ったようだ。
バリュエーションをするまでもなく、リバース・エンジニアリングするだけで結論は明らかだという。
リバース・エンジニアリングとは、現在の株価を正当化するために、どのようなことが実現しなければいけないか、それは可能か、という検討だ。
5,000億ドルの売上でソフト会社なみの利益率の会社でないと正当化できない。・・・
私は懐疑的だ。
もしも実現すれば、歴史上どの企業も成し遂げられなかったことになる。
なぜ市場はこれほど非現実的な前提を是としているのか。
ダモダラン教授は「物語のピース」という視点で説明した。
前提のうち売上5,000億ドルのピースは、それだけなら可能かもしれない。
ソフト会社なみの利益率というピースも、それだけなら可能かもしれない。
「問題なのは、ソフト事業の利益率だからと言って、伝統的な自動車企業の売上(5,000億ドル)になった時に(テスラに)15、20、25%の利益率を想定していいかだ。・・・
通常こうしたピースは一緒に実現しないものだ。
マイクロソフトは、売上1,300億ドルで22%の利益率だ。
今テスラに想定したのは、マイクロソフトの4倍の売上に対して同じ利益率だ。」
ダモダラン教授は、市場が都合のいいピースを異なる物語から取ってきてつなぎ合わせていると心配する。
教授は、テスラの事業上の問題を指摘しているわけではない。
ただ、株価がファンダメンタルズで正当化できない域に達したといいたいのだ。
同様のことはビデオ会議システムのズームとフィットネス機器・サービスのペロトンにも言えることだ。
両社について教授は、パンデミック下での「完璧なプラットフォーム」と称する一方、時価総額は正当化できない高みに上がってしまったと指摘した。
さらに、いくつかコメントしている。
ズームについて
ズームの問題は、ネット会議・教育の市場がはるかに大きくなるとしても、先行き競争が厳しくなっていくことだ。
これが正しく株価に織り込まれていない。
ペロトンについて
今ペロトンは月13ドルを課金している。
ネットフリックスは月16ドルだ。
ペロトンは比較上かなり高いフィットネス・アプリのサブスクのように見える。