投資

アスワス・ダモダラン そろそろ「PBR 1倍」をやめませんか?
2023年9月11日

世間で「PBR 1倍」が騒がれて数か月が経つが、こうした目くらましの流行がさっさと終わればいいと考えているのは筆者だけだろうか。


こうした目くらましが始まったのは、東証が3月に公表した『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて』あたりからだろう。
東証は正しいことを言っている。
それを誤用するセルサイドやメディアが多すぎる。

東証はPBR 1倍などとは言っていない。
PBRは「現状分析に用いる指標の例」として挙げた7つの指標の1つにすぎない。
しかも「どの指標を用いるかについて一律の定めはありませんが、投資者ニーズ等を踏まえ、ご検討ください」との注書きさえある。

セルサイドやメディアにはPBRの分母である純資産簿価を解散価値だとか取得価格だとか説明する人が多い。
確信犯としてやっている。
(トービンのQなどという言葉があるのも、彼らを後押ししてしまう。)
しかし、純資産簿価は時間とともに解散価値でも取得簿価でもなくなっていく。
ストックとしての純資産簿価を考えた時、PBR 1に大した意味はない。
(意味があるとすれば、微分値だろう。
近時に増減した純資産にはなにがしかの意味があるだろう。)
大切なのは、投資家から預かった資金を有益に使えているかに尽きる。
それはPBR 1を区切りに変わるものではない。

最近、バリュエーション学長の異名をとるアスワス・ダモダラン ニューヨーク大学教授が、株価評価とバランスシートの関係について話していた。

私はバランスシートを使ったことがない。
私はバランスシートに基づいて企業の価値を評価したことはない。
・・・(バランスシート・アプローチは)根源的価値評価でもないしDCF評価でもない。


-投資
-, ,

執筆:

記事またはコラムは、筆者の個人的見解に基づくものです。記事またはコラムに書かれた情報は、商用目的ではありません。記事またはコラムは投資勧誘を行うためのものではなく、投資の意思決定のために使うのには適しません。記事またはコラムは参考情報を提供することを目的としており、財務・税務・法務等のアドバイスを行うものではありません。浜町SCIは一定の信頼性を維持するための合理的な範囲で努力していますが、完全なものではありません。 本文中に《》で囲んだ部分がありますが、これは引用ではなく強調のためのものです。 その他利用規約をご覧ください。